研究課題/領域番号 |
21K05022
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高石 和人 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (70513430)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビナフチル / 軸性キラリティー / 円偏光発光性 |
研究実績の概要 |
軸性キラルビナフチルまたはナフタレン四量体を用いた円偏光発光色素の開発を行った。特に、異種発光団のペアを用いて円偏光発光性色素を創り出す方法の開発、および軸性キラルな錯体色素開発に重点を置き、以下の研究を進めた。 (1) 軸性キラルビナフチルまたはナフタレン四量体に、異種の発色団 (ピレン、ペリレン、N,N-ジメチルアニリンのうち 2 種) を交互に連結させた。これらはいずれも導入した発色団のエキシプレックスに由来する強い円偏光発光性を示した。理論計算により、カルボニル酸素同士と芳香環同士の反発によって立体配座がある程度固定されていることが示された。さらに、右回りにねじれたエキシプレックスは正の、左回りにねじれたエキシプレックスは負の円偏光発光を示すという経験則を初めて見出した。また、わずかではあったが、ビナフチルよりもナフタレン四量体を用いた方が優れた性能を示し、発色団の数が多い方がその動きを抑制できると考えられた。 (2) 軸性キラル 1,1’-ビナフチルと 2,2’-ビピリジルを連結させた環状体をいくつか合成した。これらの環状体では、ビピリジルに軸性キラリティーが移動することが分かり、R ビナフチルからは R ビピリジルが生じた。これは簡便な軸性キラルビピリジルの構築法である。次にこの環状体をルテニウムに配位させたところ、配位子 3 つとルテニウムイオン 1 つから成る錯体を合成できた。デルタ体とラムダ体がほぼ当量ずつ得られ、ラムダ体が赤色円偏光発光を示した。その強度 (異方性) は、これまで報告されているルテニウム錯体のうちで最大値であった。理論計算により、ラムダ体では、複数の CH/π 相互作用によって励起状態の歪みが抑制されていることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までにいくつかの優れた円偏光発光有機色素および錯体色素を開発した。それらの立体構造と発現機構を明らかにでき、新しい分子設計指針を確立した。さらに当初は想定していなかった円偏光発光のスイッチングに成功しており、研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
まず既に合成を達成した軸性キラル化合物について、立体構造およびキロプティカル特性をより深く調査し、それらの相関を明らかにする。また外部刺激によって円偏光発光性が変化する化合物を見出しているため、機器分析等により、変化する要因を明らかにする。さらに、より優れた色素開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
有機合成・錯体合成や機器分析が当初予定していたより順調に進み、消耗品費が想定よりかからなかった。また機器の破損や故障も想定より少なかった。さらに学会やシンポジウムのほとんどがオンライン開催であり、旅費がかからなかった。次年度は研究をより効率良く進行させるため、有機合成に必要な機器類を購入する。さらに、より積極的に学会等に参加し、研究成果を発表・公開する。
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