研究課題/領域番号 |
21K05025
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三浦 洋平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (30708532)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イミダゾール / 有機結晶 / 有機蛍光分子 / 超分子 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
本研究ではアリールエチニルイミダゾール分子を基本骨格として、新奇の小分子機能性有機蛍光分子骨格の開発を目的としている。 2021年度は主にメカノフルオロクロミズム(MFC)を示す分子の合成と物性評価を行った。当初はMFC特性の発現にはジフェニルエテニル基が必要と考えていたが、ベンゾイル基を持つ2-methyl-4-arylethynyl-5-benzoylimidazoleがMFCを示した。そのため、この分子のMFC特性について詳細に研究を行った。当該の分子は結晶状態では弱い青色蛍光を示すが、すりつぶすことで黄色の蛍光を示した。また、その蛍光色は室温で一定の時間置いておくことで元の色に戻る自己回復特性を示す事を見出した。自己回復に要する時間は置換基によって大きく異なった。結晶中ではベンゾイル基が、メチル基やアリールエチニル基との立体反発によりねじれた構造を取り、結晶中で分子が動くことができるスペースができるため、このようなMFC特性を示す事が分かった。固体を融解させて急冷することで室温でガラス状態もしくは過冷却液体となった。これらの状態でも黄色の蛍光を発し、すりつぶした状態と同様の蛍光特性を示した。XRD測定等から結晶をすりつぶすことでアモルファス状態へと変化していることが分かった。 また、ピリジルエチニル基を導入した4-pyridylethynyl-5-arylethynylimidazoleの合成も合わせて行った。この分子は溶液中で良好な蛍光特性を示し、結晶中では水素結合により特徴的な4量体構造を形成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた分子の合成の中間体で目的のメカノフルオロクロミズム特性を示す事を明らかにできたため、合成の段階数を減らすことができ予定以上に研究をスムーズに進めることができた。 また、当初予定していた構造とは異なるが、興味深い超分子構造を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に見出したMFC特性を示す分子について、さらなる置換基を導入することで蛍光特性と置換基の関係や、MFC特性とガラス転移の相関性などについても詳しい研究を進める。また、上記分子の結晶が相転移を示さないThermosalient効果を示す事を見出した。このThermosalient効果のメカニズムについてもX線結晶構造解析等を用いて、メカニズムを明らかにする。 新たな分子として、より柔軟な構造を持つイミダゾリルエチニル基を二つ導入した分子等の合成を行い、蛍光特性やMFC特性の発現を目指す。 加えて結晶中でみられた水素結合4量体が溶液中や液晶状態で形成可能かについても、濃度、温度を変化させたNMR測定やXRD測定等を用いて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は学会がすべてオンライン開催になったため、予定していた旅費がかからなかった。また、購入予定の機器の選定が間に合わず、支出が次年度に回ってしまったため。 2022年度は学会参加費用、機器の購入に使用予定である。
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