最終年度は昨年度新たに開発したイミダゾールを配位子とした有機ホウ素錯体の合成と光学特性の評価を中心に行った。ベンゾイルイミダゾールのイミン体と三フッ化ホウ素から得られる有機ホウ素錯体は、中心骨格の周りにアリール基を複数もつため、アリール基同士の立体反発により非平面的な構造をとる。このため、溶液だけでなく固体でも高い蛍光特性を示す事を明らかにした。また、励起状態での構造緩和による変化が大きいため、溶液中では100 nmを超える大きなストークスシフトを示した。固体状態ではすりつぶすと蛍光特性が変化するメカノフルオロクロミズム、加熱により蛍光特性が変化するサーモフルオロクロミズムを示し二種類の刺激に対して応答性をしめす蛍光分子であることを明らかにした。 研究期間全体を通して、イミダゾールを中心の骨格とした複数の新奇有機蛍光分子の開発に成功した。初年度では5-ベンゾイル-4-アリールエチニルイミダゾール類がメカノフルオロクロミズム特性を示し、蛍光性ガラスとなることを明らかにし、イミダゾール骨格を持つ蛍光分子の有用性を見出した。次年度はその分子の誘導体を複数合成することで、メカノクロミズム特性の制御を行った。加えてそのうちの一つの分子が室温以上で相転移を示さないサーモサリエント効果をしめす初めての分子となることも明らかにした。最終年度は2年間で研究したベンゾイルイミダゾールをホウ素錯形成へ発展させ、新規の有機ホウ素錯体を開発するに至った。この有機ホウ素錯体は上記の通り多彩な蛍光特性を示す事を明らかにした。これらの通り、三年間の研究を通して大きなストークスシフトや、超分子形成、メカノクロミズム、サーモフルオロクロミズム、サーモサリエント効果など多種の機能性を持った蛍光分子の開発に成功し、研究課題の「小分子を利用した非π縮環型新奇機能性有機蛍光材料の開発」に成功したといえる。
|