研究課題/領域番号 |
21K05033
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
吾郷 友宏 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90466798)
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研究分担者 |
安田 琢麿 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (00401175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機ホウ素化合物 / 発光材料 / 有機エレクトロルミネッセンス / 有機典型元素化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者がこれまでに報告してきた含ホウ素共役分子であるジベンゾヘテラボリンを基本構造とした紫外線~近紫外線領域で発光する熱活性化遅延蛍光(thermally activated delayed fluorescence, TADF)発光体の開発を行っている。TADF発光体は高価・希少な貴金属元素を用いずに有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)の効率向上を可能とすることから、現在世界的に研究開発が行われているが、それらの発光帯域は可視領域に留まっており、工業・医療用光源やバックライト等様々な応用分野が見込まれる紫外線~近紫外線領域で駆動するTADF発光体の例はほとんど無い。一方、申請者は前述のジベンゾヘテラボリンと呼ばれる骨格を活用することで、高効率で青色EL発光するTADF分子を開発しており、この構造がより短波長の紫外領域でのTADF発光体の性能向上にも有効と考え、本研究に着手している。 令和3年度は、青色発光体として実績のあるジベンゾチアボリン発光体を基本構造として、共役系を短縮し発光波長の短波長シフトを狙ったジチエノチアボリン発光体の開発を検討した。その結果、目的とした短波長発光を得るには至らなかったが、予期しなかった結果としてジチエノチアボリンにフェノチアジンドナーを連結した分子が紫色と緑色の二重蛍光発光を持つことを見出した。 また、目的の紫外発光特性が期待できる発光体として、新規な含ホウ素共役分子構造であるモノベンゾヘテラボリンに着目し、モノベンゾオキサボリン及びモノベンゾチアボリン構造を持つTADF分子の合成を進め、その前駆体分子まで合成を完了することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的分子として設定したジチエノチアボリン系発光分子では、予想していた短波長発光の発現には至っていないが、予期していなかった性質としてフェノチアジンとジチエノチアボリンを連結したドナー・アクセプター・ドナー型分子において二重蛍光発光を見出すことができた。 また、令和3年度の検討で新たに短波長発光体として設計したモノベンゾオキサボリンおよびモノベンゾチアボリン型TADF分子については、これらの発光体の前駆体分子までの合成を完了することが出来ており、令和4年度中には目的の短波長発光性のモノベンゾヘテラボリンTADF分子の合成が見込まれる段階に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の検討で新たに見出した二重発光有機ホウ素化合物については、二重発光の原因を解明し令和4年度中に学会発表および論文発表を完了する予定である。加えて、二重発光を利用した単一分子白色発光体への応用を検討する。 本研究計画の中心である近紫外発光体については、令和3年度の検討で合成したモノベンゾヘテラボリン前駆体へのホウ素置換基の導入を行いモノベンゾオキサボリンおよびモノベンゾチアボリンの合成を完了する。さらにドナー置換基を導入することでTADF特性を発現させ、目的とする近紫外発光特性を明らかにする。
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