研究課題/領域番号 |
21K05035
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
山本 浩司 就実大学, 薬学部, 講師 (80725557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルバゾール / アザボリン / 縮環構造 / 環状化合物 / らせん化合物 / ドナー-アクセプター / 光物性 |
研究実績の概要 |
多環芳香族炭化水素(PAHs)の炭素-炭素結合をホウ素-窒素結合に置き換えたBN-PAHsは,π電子系材料の基本骨格として注目を集め,新規材料候補として有望視されている.本研究では,研究代表者が見出したカルバゾール誘導体の求電子剤的ホウ素化反応を用いて,ドナー-アクセプター, らせん,環,ベルトといった共役系を有するBN-PAHsを系統的に合成する.これらの諸物性解明を通して,有機電子材料または有機光学材料への道筋をつけることを目指す. 2021年度には,1,8-ジフェニルカルバゾール誘導体の求電子剤的ホウ素化反応によるカルバゾールを含むアザボリン誘導体の効率的合成法を論文発表した(Chem. Lett. 2022).2つのアザボリンがベンゼンで縮環した二量体も合成できた.2022年度は本反応を利用して,以下の成果を得た. 1) らせん構造を有する含カルバゾールアザボリン多量体の合成および物性解明 縮環二量体が比較的高収率で得られることがわかったので,らせん構造を有するベンゼン縮環多量体(BN-ヘリセン)を合成した.具体的には三量体および四量体の合成に成功した.三量体のX線結晶構造解析より,らせん構造をとることを確かめた.アザボリンユニット数が光学特性および電気化学的特性に与える効果を明らかにした. 2) ドナー部位を導入した含カルバゾールアザボリン誘導体の合成および物性解明 含カルバゾールアザボリン誘導体に電子供与基であるメトキシ基を導入することで,蛍光波長がやや長波長シフトした.よりドナー性の高い置換基を導入することで,ドナー-アクセプター相互作用に基づく特異な物性の発現が期待できる.ドナーとしてカルバゾール,フェノチアジン,ジフェニルアミンを導入した誘導体を合成した.ドナー部位が光学特性および電気化学的特性に与える効果を明らかにした.また, ドナーの置換位置の効果も検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に報告した求電子ホウ素化反応により,種々の含カルバゾールアザボリン誘導体の合成に成功した.また,得られた種々の誘導体の諸物性解明により,カルバゾールアザボリン誘導体の構造と物性の相関に関する重要な知見を得ることができた.以上より,申請書の課題を順調に進展させていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,以下の検討を行う. 1) らせん構造を有する含カルバゾールアザボリン多量体のキロプティカル特性解明:らせん構造を有する縮環多量体(BN-ヘリセン)のキラルカラムによる光学分 割を行い,円偏光発光について検討する.ラセミ化の活性化エネルギーについても調べ,らせん構造の熱的安定性を明らかにする.また,縮環様式の異なるBN-ヘリセンを系統的に合成し, ねじれ角および電子状態が諸物性に与える効果を明らかにする. 2) ドナー部位を導入した含カルバゾールアザボリン誘導体の光物性評価:ドナー-アクセプター-ドナー共役系化合物は,高効率な熱活性化遅延蛍光やメカノクロミズムを示す蛍光材料として注目を集めていることから,2022年度に得た化合物についても,これらの光物性を検討する. 3) 環状縮環構造を有する含カルバゾールアザボリン多量体の合成と機能探索:カルバゾールアザボリンが環状に縮環した化合物を合成する.自己組織化によるチューブ構造の形成が期待できる.固体状態における電荷移動度に着目する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,出張を可能な限り自粛した.また,旅費は大学予算により支出し,旅費を本研究費から使用しなかった.このため,次年度使用額が生じた. 使用計画に関して,研究代表者が2022年度より昇進に伴い異動し,研究環境を整える必要が生じたため,物品費(備品および試薬,有機溶媒,ガラス器具などの消耗品費)として使用する予定である.
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