研究課題/領域番号 |
21K05040
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 陽介 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 名誉教授 (50158317)
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研究分担者 |
SHANG RONG 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (70754216)
中本 真晃 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (90334044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不安定中間体 / 三重項カルベン / 合成 / ESR / 単離 |
研究実績の概要 |
非常に多くの段階の前駆体アレンの合成法に改良を加えつつ、目的のアレンの合成に少量ながら成功した。この段階でのアレンの綺麗さがその後の酸化生成物の綺麗さに直結することがわかったので、地道にアレンの合成経路・精製法を改良した。特に最後の環化段階におけるNi(COD)2触媒の純度が大きな影響を持つことがわかったので、Ni触媒の合成・結晶化をおこない、触媒合成直後に環化反応を行うなどの改良を行ったことが純度の良いアレン合成につながった。そのようにして得られた純粋なアレンの酸化について固体状態での撹拌(ミリングなど)を含めて、いくつかの方法や溶媒などを再検討したのち、それぞれの反応でESRによる観測をおこなった。その結果、現在のところ、クロロベンゼン中での酸化剤による合成が最も効果的であると結論づけることができた。ESR観測からは、初めての熱的に安定な三重項カルベンの合成に成功したことがわかった。ただ、まだ酸化剤など他の化合物と混合している状態での観測であり、三重項カルベンの純粋な状態での取り出しには成功していないので、さらに再沈殿・再結晶溶媒の検討をおこなっていく予定である。ジクロロメタンと三重項カルベンは-50°Cでも反応してしまうが、それよりも低温であれば再結晶できる可能性があると考えている。また、クロロベンゼンには、ジカチオンである三重項カルベンはあまり溶解していないので、反応混合物を濾過すれば、それなりに綺麗な三重項カルベンが得られるが、結晶化のためには、熱をかけた再結晶を行う必要があると考えている。その温度に三重項カルベンが耐えられるか?についても検討すべき課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前駆体合成が非常に多段階であるために、非常に時間がかかっているが、合成した三重項カルベンは期待通り熱的に安定であることが分かりつつある。ただ、まだ酸化剤などとの混合物でしか得られておらず、三重項カルベンのそのものの単離・結晶化が今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は基礎化学分野の金字塔となりうる世界初の三重項カルベンの単離およびできればX線結晶構造解析に挑みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の金額が予定より少しだけ少なかったために736円という非常に少額が次年度使用額として残ったが、来年度も合成・機器使用料などの経費が発生する予定であるため、次年度もこの736円を加えた金額を使用したい。
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