研究課題
多段階を要する原料アレンの合成に苦しんだ。とくに最後の二つの段階、最重要前駆体であるアレン合成の段階、の再現性がよくないという非常に大きな問題があったので、今年度中は、主に合成法の再検討や前駆体の精製方法の改良にとりくんだ。その結果、前駆体としてアクリジニウムカチオンを経由する方法が非常に再現性が良いことがわかった。また、アクリジニウムカチオンが空気にも水にも安定であることがわかり、結晶化などの精製もかなり容易であることがわかった。そのため、アレン合成の最後から二つ目の段階の合成と精製は全く問題がなくなった。そのため、アレン合成の最後の段階もかなり楽になった。実際には、そのアクリジニウムカチオンからDBUで脱プロトンして求核性のパートとし、アクリドンを無水トリフルオロメタンスルホン酸(Tf2O)で活性化した求電子試薬と反応させる方法で、原料のアレンを良い収率で合成することに成功した。これにより、長年の懸案であったアレン合成の再現性の確立に成功した。そのアレンを海外との共同研究に基づいた酸化剤(アミニウムカチオンラジカルのカルボラン塩)とグローブボックス内で室温で反応させることによって、目的の三重項カルベン合成に成功したものと考えている。まだ、目的の三重項カルベンの確固たる証拠は得られてはいないものの、ジクロロメタンとの反応の主生成物が2塩化物であることは確認できており、目的の三重項カルベンからの反応生成物であると考えている。来年度の最終年度には、必ず目的は達成できると考えている。
2: おおむね順調に進展している
本年度が3年目の最終年ではあったが、コロナで研究代表者が合成検討に参加できない期間が長く続いた。今年度は、研究代表者も研究室での実験に参加して実験研究にも従事したため、大きな進展があった。来年度には十分目的を達成できる。
今年度で、ようやく合成法の確立ができて、再現性も確保できている状況になったので、来年度最終年度は、多量の原料を担ぎ上げて最重要前駆体であるアレンをかなりたくさん合成する。その後、すでに合成している酸化剤との反応をおこなって、構造決定・反応などの検討を行いたい。合成が長年の課題であったが、今年度で解決したものと期待しているので、目的はほぼ確実に達成できると考えている。
今年度までに完了予定ではあったが、コロナ禍の2年間で、研究代表者が実験研究に参加できず、今年度になってようやく研究代表者が実際の実験に参加して、議論と検討を重ねることができた。その結果、今年度は実際に合成面での大きな発展があったので、1年間延長はしたが、来年度は、必ず目的が達成できる状況を作ることができた。後1年間の合成用試薬・測定料、学会発表などのために残金を使用する計画である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Chemistry. A European Journal
巻: 29, e202302303 ページ: 1-10
10.1002/chem.202302303