研究課題/領域番号 |
21K05045
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高澤 健 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (10354317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機結晶 / 構造相転移 / アクチュエータ / ナノファイバー / 単結晶 |
研究実績の概要 |
本研究課題の最終目標は、「構造相転移を利用した、繰り返し動作が可能な、有機単結晶ナノファイバーアクチュエータの実現」である。2021年度の研究で、本目的をほぼ達成することができた。1, 2, 4, 5-四臭化ベンゼン(以下TBB)のバルク結晶は、40℃程度の室温領域で、構造相転移により粉々に砕けたり跳躍することが報告されている。TBBのエタノール溶液を基板上に滴下し、蒸気圧を制御した条件下で溶媒を蒸発させることで、TBBの単結晶ナノファイバーを基板上に合成することに成功した。顕微鏡観察下でナノファイバーを昇温したところ約38℃で屈曲変形し、降温すると約35℃で元の形状に戻った。変形は30ms以下で完了する高速現象である。昇温⇔降温のサイクルを20回以上繰り返しても、ナノファイバーは劣化することなく屈曲変形を繰り返した。また、ナノファイバーが屈曲の際に発生する力の測定を行った。その結果、ナノファイバーは、自身より1万倍程度質量の大きい物体を重力に抗して空中に跳ね上げることが可能な力を発生していることを明らかにした。さらに、TBBナノファイバーを合成するために開発した、蒸気圧制御下で溶媒を蒸発させる単結晶成長手法を、色素分子(擬イソシアニン)に適用し、ガラス基板上にサイズを制御したファイバー状会合体(J会合体)を合成することに成功した。合成した会合体の分光計測を行い、吸収や発光寿命などの光学特性が会合体のサイズに強く依存することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の最終目標を2021年度の研究でほぼ達成することができたため、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
TBBの単結晶ナノファイバーが、室温付近で繰り返し動作可能なアクチュエータとして機能することを実証できた。しかし、TBBナノファイバーは昇華するため、長期的に安定動作させることが困難である。今後は、昇華を抑制して長期的な安定性を向上させる手法の探索を行う。また、実用的なデバイス応用を目指して、ファイバーの屈曲変形から機械的運動を効率的に取り出す方法の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張を行わなかったことと、購入を予定していた光学部品の一部が納期未定のため発注できなかったことで次年度使用額が生じた。2022年度は、可能であれば学会出張を行うとともに、2021年度に発注できなかった物品を購入することで、次年度使用額を使用する。
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