研究課題/領域番号 |
21K05047
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 和弘 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (60375607)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NHC / 金属錯体触媒 / メタロセン / 面不斉 |
研究実績の概要 |
本研究では、環状アミノメタロセニレンカルベン(CAMC: Cyclic (Amino)(Metallocenylene)Carbene)配位子が配位した金属錯体触媒を開発している。CAMCは、一般的なNHC(N-ヘテロサイクリックカルベン)として知られるジアミノカルベンと異なり、カルベン環内に窒素原子を一つしかもたないため金属に対してより強力な配位力をもつ。本研究では、CAMCのこのような性質を利用して、還元の枠を越えたより難易度の高い反応系(不斉炭素ー炭素結合形成反応、不斉酸化反応等)において、触媒活性と選択性の両立が図れる力量ある触媒の開発を目指している。これまでに我々は、CAMCのプロトタイプとして、七員環CAFeC(Cyclic (Amino)(Ferrocenylene)Carbene)、六員環CAFeC、五員環CAFeC、ペンタメチルシクロペンタジエニル基をもつ七員環CAFeC等を報告している。特に、七員環CAFeC及びペンタメチルシクロペンタジエニル基をもつ七員環CAFeCに関しては、不斉ホウ素共役付加反応や不斉水素移動反応において、良好な不斉配位子として利用できることを明らかにした。 昨年度は一昨年度に引き続き、プロトタイプ配位子のフェロセン母格をコバルトセン母格に置き換えたCAMCの開発を行い、このものが配位したロジウム錯体の合成を試みた。一昨年度は、目的とするCAMC/Rh錯体の合成には至ったものの、収率が極めて低いという深刻な問題に直面した。昨年度、この点の改善に向けた様々な取り組みを行った結果、問題点を狙い通りに解決することができた。 また昨年度は、これまで合成することが難しかった六員環CAFeC金属錯体の研究にも取り組んだ。結果として、六員環内の適切な箇所に置換基を導入すれば、目的物が上手く合成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度までの知見をもとに、CAMC金属錯体の開発を実施した。昨年度は、合成した前駆体に塩基を作用させて、カルベンを発生させ、ロジウムに配位させる段階の検討を詳細に行った結果、目的とするCAMC/Rh錯体が良好な収率で得られるようになった。得られた錯体は、ロジウム触媒を利用する不斉開環反応に有用であることが分かっている。しかしながら、合成した触媒を利用した不斉反応のエナンチオ選択性が、触媒のロットによって大きくブレてしまうという問題が新たに生じた。この原因として、触媒の光学純度にバラつきがあることが判明したため、現在、どの合成ステップがラセミ化を引き起こしているかを調査している。 また、これまでに我々が進めてきたプロトタイプ配位子の開発研究で、我々は七員環CAFeC金属錯体の合成に比べ、六員環CAFeC金属錯体の合成は極端に難しいという知見を得ている。過去に報告された類縁カルベンに関する他の研究者らの研究内容と照らし合わせた結果、この原因は、カルベン発生段階で、副生成物としてアゾメチンイリドが生じているからではないかと考えた。そこで昨年度は、アゾメチンイリドの副生を防ぐために、六員環内に置換基を導入した新たなCAFeCの開発も試みた。結果、やはり適切な箇所に置換基を導入することによって、六員環CAFeC金属錯体が合成できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているコバルトセンを母格にもつCAMC金属錯体および六員環CAFeC金属錯体の開発を継続する。CAMC金属錯体の開発では、配位子合成の途中で配位子の光学純度に問題が生じることが分かったので、問題となるステップの反応温度などを再検討する計画である。また、六員環CAFeC金属錯体の開発に関しては、配位子のバリエーションを拡大する計画である。また本年度は、ここまでに実施してきた二つの配位子の開発で得られた知見をもとに、六員環内に置換基をもつ新たなCAMC金属錯体の開発も実施する計画である。
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備考 |
研究室ホームページ http://tmco.chem.chiba-u.jp
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