未活用バイオマスの循環資源化を目的として,リグニン/セルロース認識能を有する低分子量のペプチド人工酵素を開発し,バイオマス由来のリグニン/セルロースの直截的かつ選択的分子変換法の開発を行った。また,本人工酵素と併せて,固体粉末状態のバイオマス試料に有効なマイクロ波/メカノケミカル反応による直截的分解・変換反応具体的についても検討を行った。具体的には,1)リグニン・多糖類・蛋白質・脂質の夾雑系混合物であるバイオマス中で,リグニン/セルロースに特異的に結合できる~15残基程度の認識ペプチドとリグニン/セルロース分解・変換機能を有する遷移金属錯体触媒の探索,2)認識ペプチドー錯体触媒の結合によるペプチド人工酵素の創出,3)未活用の廃棄物系バイオマスの循環資源化を最終目的とした,バイオマス中リグニン/セルロースの選択的分解・変換法の開発,4)分解・変換物からの有用芳香族分子・機能性分子の探索方法(マルチオミックス法)の開発である。 令和5年度では,前年度に引き続き,リグニン/セルロース源として未活用バイオマスであるリグニン類(アルカリリグニン,改質リグニン(森林総研,山田竜彦拠点長提供),稲藁,廃棄生花等の廃棄物系バイオマスの分解・変換法について基礎検討を行った。その結果,廃棄木材(木粉)および廃棄生花を適当な触媒や試薬と混合した後にマイクロ波反応やボールミルによるメカノケミカル反応を行うことによって,通常の反応手法では得られない芳香族類や脂質・糖質由来の有用成分が得られることを見出した。特に廃棄生花から得られた機能性微粒子は抗酸化活性や抗菌活性を示し,医薬・香粧品原料への応用が期待される。
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