研究課題/領域番号 |
21K05055
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 昌彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60192704)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キラル配位子 / キラルビルディングブロック / 光学純度 / 立体化学 |
研究実績の概要 |
「三連続したアミノ基とヒドロキシ基をもつキラルビルディングブロックの効率的合成」の課題のもと、令和3年度は二重結合を持つエポキシド4,5-epoxycyclohex-1-eneに対して独自に開発したキラルなN,N-二座配位子(キノリル骨格を含む)と銅からなる触媒存在下に、tert-ブチル過安息香酸を酸化剤に用いてアリル位酸化反応を行なった。 その結果、(3S,4S,5S)-3-benzoyl-4,5-epoxycyclohex-1-eneが84%eeの光学純度で得られた。得られたこの化合物を一旦、ベンゾイル基を脱保護したのち、p-ニトロベンゾイル基へと変換し、再結晶をすることで光学純度を100%ととした。エポキシドを水で開環することで、ヒドロキシ基が三連続のキラルビルディングブロックの合成を達成した。三つのヒドロキシ基の隣接部分はいずれもトランス(アンチ)であった。さらに、アジ化ナトリウムで開環することによってヒドロキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基の順で交互にトランスで得られた。 以上は、アリル位に酸素導入を行った結果得られたものである。次にアリル位にアミノ源を導入することで、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基およびヒドロキシ基、アミノ基、アミノ基が得られることも確認した。立体はいずれも互いにトランスで、光学純度は100%であった。さらに、残った二重結合をオゾン酸化することによって鎖状化合物への変換も行なった。得られた化合物は鎖状のジアルデヒドのため酸化されやすく、速やかにアセタール保護することで有用化合物合成の中間体として用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「三連続したアミノ基とヒドロキシ基をもつキラルビルディングブロックの効率的合成」には3x3x3=27通りの立体化学が存在し得る。そのうちの二つを実際に完全に立体を制御して本方法が有効であることを立証できた。同様の手法で、二重結合を持つエポキシド4,5-epoxycyclohex-1-eneに対してアリル位にアミノ基を導入したのち、水、あるいはアジ化ナトリウムで開環すればヒドロキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基の三連続、ヒドロキシ基、アミノ基、アミノ基の三連続の立体化学が制御できる。現在、この反応に取り組んでおり、良好な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は基質に二重結合を持つエポキシド4,5-epoxycyclohex-1-eneを用いてアリル位酸化を行なったが、令和4年度はエポキシドの代わりにアジリジンをもつ7-tosyl-7-azabicyclo[4,1,0]hept-3-eneを基質に用いてアリル位に酸素の導入、窒素の導入を行う。その後、アジリジンを水、またはアジ化ナトリウムで開環することにより、アミノ基、ヒドロキシ基、アミノ基の三連続、および、アミノ基、アミノ基、アミノ基の三連続立体化学制御を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額B-Aが108円生じた理由は当該年度の薬品代の一部が値段が下がったためであり、翌年分に使わせていただく。
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