研究課題
「三連続したアミノ基とヒドロキシ基をもつキラルビルディングブロックの効率的合成」の課題の3年目である。天然物や医薬品には連続した不斉中心をもつものが多い。そこで一回の反応で複数の連続する不斉中心炭素を構築する手法が開発できれば光学活性化合物の合成において有効な手段となる。本研究では二重結合をもつメソ型アジリジンを基質に用いて触媒的不斉アリル位酸化反応を行い、一回の反応で三連続不斉中心炭素を構築することを目的として研究を行った。その結果、連続した三つの不斉炭素の望む位置にアミノ基とヒドロキシ基の個数と立体化学を完全に制御したキラルビルディングブロックを効率よく合成する方法を確立することができた。さらに、最終年度では、メソ化合物であるアザビシクロヘプテンに対してキラルな銅触媒を用いて不斉アリル位酸化反応を行うと二種類の構造異性体が高い光学純度で得られる現象を見出した。この反応は、単一の出発原料から単一の触媒を用いて二種類の構造異性体をどちらも高い光学純度で得る初めての例であり、Regiodivergent Desymmetrizationと名付けた。一方、近年、パラレル速度論的分割という新しい速度論的分割法が報告された。この手法ではラセミ体の原料から二種類の構造異性体が高い光学純度が得られる。ラセミ体は鏡像異性体(エナンチオマー)の1:1混合物であり単一の化合物ではない。それに対し、応募者が発見したRegiodivergent Desymmetrizationは原料がメソ体であり、単一の化合物であるという点でパラレル速度論的分割とは全く異なる新しい現象である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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