研究課題/領域番号 |
21K05058
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永島 英夫 九州大学, グリーンテクノロジー研究教育センター, 特任教授 (50159076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 元素減量 / 高活性触媒 / イリジウム / 含窒素π共役化合物 / 光・電子機能 |
研究実績の概要 |
3か年の本研究全般を通じて、ファインケミカル合成の鍵技術である均一系触媒反応の元素戦略の一環として、元素減量を実現する高い触媒効率で進行する新反応を開発し、アミドやイミドから新たな骨格を持つ含窒素π共役系化合物、含窒素複素環の合成を達成する。合成には、これまでの本研究者の研究成果である、三級アミドから高活性イリジウム触媒とヒドロシランを用いた還元的脱水反応を用い、その基質適用性を拡大するとともに、得られた新規化合物の光・電子機能の開発をおこなう。研究手法として、合成化学実験で反応開発を実施するが、相補的に計算科学を活用し、「高活性イリジウムを用いるエナミン合成は、なぜ、高選択的、高触媒活性なのか?」の解明、新規含窒素化合物の物性予測による合成実験へのフィードバックを図る。2021年度は、3か年の研究の基盤を構築する時期と位置づけ、まず、実験化学において、アミドからインドール、イミドからピロールの合成例を拡大した。並行して、複素環前駆体である共役エナミンの環状アミドからの合成触媒の拡大を行い、従来用いていたVaska型イリジウム触媒以外にも、白金、ルテニウム、鉄、ニッケル触媒でも良好な選択性を確認した。予想外の成果として、Vaska型イリジウム触媒が活性、エナミン選択性のほか、還元されやすいカルボニル官能基に耐性を持つのに対し、新たに、イリジウムジエン錯体がエナミン選択性は劣るが、極めて高活性なカルボニル基還元触媒であることを見出している。計算科学では、実験的に得られている共役含窒素化合物のホール輸送剤としての機能とそれらのフロンティア軌道エネルギーの相関に着目し、新規π共役エナミン構造の拡張指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は3か年の研究の基盤構築の年であり、まず、研究成果を創出する実験および計算ファシリティを充実させた。その上で、予定どおり、合成実験でπ共役エナミン型複素環とピロール型複素環の合成経路を確立し、基質適用範囲を拡大しつつある。計算科学は生成物の機能予測の手法を確立した。予想外の展開として、合成実験でカルボニル化合物の還元反応に極めて優れた活性を持つイリジウム触媒を発見し、研究としてまとめの段階へ入っていることは、予定以上の進展である。一方、計算科学で当初予定していた反応機構の解明研究は、計算の手法は今年度確立しており、具体的計画もたっているが、他のプロジェクトとの関係で所有している計算用PCのマシンタイムに余裕がなく、次年度以降での実施を目指している点、やや遅れがある。以上を総合して、概ね順調で3か年計画を実施していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の従事者は1名でありながら、合成、計算、分析、機能検証の複合的な要素を追求することが必要な研究であるため、3か年の研究期間全体を通じて、メリハリをつけて時間の有効活用をする必要がある。合成実験については、当初予定の研究計画、および、実験途上で得られた予想外の成果の拡張展開を含めて、成果創出に向けて柔軟に研究を進めいていく。計算科学については、計算用PCのマシンタイムのやりくりをうまくおこない、2021年度にできなかった機構計算にできるだけ早く入る予定である。できるところから、口頭発表、および、論文としてまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、出席を予定していたシンポジウムがONLINEとなり、旅費、ならびに、参加費が必要なくなったため、旅費予定額を使用しなかった。消耗品は主として化学薬品、溶媒および器具類、計算用消耗品、その他費用として、実験、計算用のレンタルスペース費用を予定していた。2020年度終了予定の科学研究費基盤研究(B)がコロナ禍で2021年度に繰り越しとなった。研究目的、内容は異なるが、この助成金で計画、実施した研究に用いた消耗品、実験、計算用のレンタルスペース費用が本研究にそのまま使えたため、予定額よりも大幅に節約できた。節約できた助成金を、2022年度、2023年度は実験および計算用消耗品、分析料、実験室、計算用のレンタルスペース費用、研究発表用旅費に振り向けることにより、研究成果の集中した創出を実現する。
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