研究の標的であるジチロマイシンに関して、環状イソジチロシン骨格をNorthern partと高度に酸化されたデヒドロイソロイシン含有ペプチドをSouthern part 、 残りのトリペプチドをEastern part として分割し、各フラグメントを縮合することにより収束的に天然物へと導くこととした。環化位置の戦略として、前駆体となる鎖状ペプチドの配列中心部にプロリンを配置することで、シスアミド構造を利用したコンフォメーションの湾曲を誘引し、環化点の接近が期待できると想定した。まずすでに確立された経路を基に最適化を行いつつ量的供給を行うことで、各フラグメントに関してグラムスケールでの調製を達成した。特にEastern part に関してFmエステル体を用いることでエピメリ化の抑制及び収率の向上を達成している。次に、各種フラグメントカップリングを行うことで全炭素骨格を有するデカペプチドをグラムスケールにて調製した。続いて、アリル基及びアロック基を除去し、過剰量のEDCIを用いる条件によって環化体を効率よく取得した後、シリル基を除去することで大環状デプシペプチドを取得した。続いてベンジル基の除去を行うべく、加水素分解の条件に付した所、副反応として環状ビアリールエーテル部位の開裂が優先する結果を与えた。しかしながら、天然物に対して同様の条件を適用した所、本副反応が観測されることはなかった。前述より合成品-天然物間における反応性・安定性の差が露見したため、申請者はアミノ酸分解によって構造決定がなされた本化合物に関して、NMRを用いた分光学的な構造解析に着手した。DEPT及びHMBC測定を軸とした種々解析の結果、報告済みの構造に含まれる高度に酸化されたイソロイシン型アミノ酸に替わり、ジエポキシド型アミノ酸を構成要素とする改訂構造を提唱した。
|