研究課題/領域番号 |
21K05060
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齊藤 巧泰 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00758451)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 双性イオン / 脱炭酸 / 付加環化反応 / 置換反応 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素を中心とする小分子の脱離反応を起点とした双性イオン等価体の発生と反応開発を以下の三項目[1]-[3]に分類して検討を行った。 [1] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子内反応の開発(付加環化反応、中員環合成) 1. 分子内[3+2]付加環化反応: アルケン部位をアルキル基で連結した炭酸エステル基質を合成し、酸触媒を作用させることで、脱炭酸反応によりオキシアリルカチオン中間体を発生させ、アルケン部位との[3+2]付加環化反応による5員環形成を伴う、二環性化合物(5-5縮環)の合成を行った。様々な酸触媒を検討した所、ブレンステッド酸が良好な結果を与え、対応する生成物を高収率かつ高い立体選択性で得ることができた。 2. 中員環合成: 分子内環化反応によるシクロへプタノン(7員環ケトン)の合成: 対応する基質の合成を行い、様々なルイス酸性を持つ金属ハロゲン化物を作用させた。その結果、四塩化チタンを利用すると、対応する環化反応とハロゲン化が立体選択的に起こり、シクロへプタノンを中程度の収率で得た。 [2] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子間反応の開発(置換反応、付加環化反応): 計画したアリル化反応とシアノ化反応について検討を行い、それぞれ対応する生成物を良好な収率と位置選択性で得ることができた。興味深いことに、それぞれの置換反応の位置選択性が異なり、アリル化反応では置換基が少ない炭素上での置換反応が優先するのに対し、シアノ化反応では多置換炭素上での置換反応が優先的に進行した。 [3] 脱窒素型双性イオン発生法に基づく反応開発: 計画した含窒素基質の合成まで行い、現在反応検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の三項目[1]-[3]に分類して検討を行った。 [1] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子内反応の開発(付加環化反応、中員環合成) 1. 分子内[3+2]付加環化反応: 従来まで同様の変換反応にはルイス酸触媒を汎用してきたが、検討の中でブレンステッド酸が最適であるという特徴を見出すことが出来た。また、その条件を用いた基質一般性の検討を行い、幅広い基質が適用できることも明らかにした。 2. 中員環合成: 分子内環化反応によるシクロへプタノン(7員環ケトン)の合成: 最適なルイス酸性の金属ハロゲン化物として四塩化チタンを見出した。また、収率の向上については検討の余地があるが、高い立体選択性で目的とする反応が進行することが出来た。 [2] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子間反応の開発(置換反応、付加環化反応): 計画したアリル化反応とシアノ化反応について、それぞれ良好な収率および高い位置選択性で反応が進行する反応条件を確立することが出来た。その結果、アリル化、シアノ化ともに本年度にて計画した内容を完遂し、学術誌に受理された。 [3] 脱窒素型双性イオン発生法に基づく反応開発: 計画した反応の実施には至らなかったが、当初困難と考えていた基質の合成までは行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
以下の三項目[1]-[3]について今後の計画を述べる。 [1] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子内反応の開発(付加環化反応、中員環合成) 1. 分子内[3+2]付加環化反応: 確立した最適な反応条件を用いて、引き続き基質の一般性を検討する。また、反応の立体選択性について調査を行う。具体的には、基質のオレフィンの幾何配置が生成物の立体化学に反映されるかどうかを調べる。 2. 中員環合成: 分子内環化反応によるシクロへプタノン(7員環ケトン)の合成: 反応条件の精査により、収率のさらなる向上を目指す。現在低温条件や高希釈条件での反応を検討中である。 [2] 脱炭酸型双性イオン発生法に基づく分子間反応の開発(置換反応、付加環化反応): 他の炭素求核剤の検討を行う。現在シリルエノールエーテルとの分子間炭素-炭素結合形成反応について検討を行っており、目的の生成物を得ることはできている。今後最適なルイス酸触媒を探索する。 [3] 脱窒素型双性イオン発生法に基づく反応開発: 合成した基質を用いて、触媒反応の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画した実験の遂行は予定通りに行うことが出来たが、 学内での研究活動には制限がかかり、計上した研究費の残額が生じた。 次年度においては、計画した実験に関わる物品費に使用するとともに、 機器備品についても不足分の調達を計画している。
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