研究課題/領域番号 |
21K05062
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
今川 洋 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (80279116)
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研究分担者 |
松井 敦聡 岐阜医療科学大学, 薬学部, 准教授 (60309698)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経突起伸展 / スピロテヌイペシンA / ネオビブサニン / NGF / BDNF / GDNF / PC12 / 1321A1 |
研究実績の概要 |
スピロテヌイペシンAがグリア細胞(1321A1)に作用し、分泌が促進される神経栄養因子がNGFであるか否かを調べることとした。すなわち、抗NGF抗体を共存させた条件にて、グリア細胞に対してスピロテヌイペシンAを作用させ、分泌された物質をPC12細胞に作用させることで、分泌された物質に含まれる神経栄養因子様物質が、NGFであるか確かめた。その結果、抗NGF抗体の共存によっても、PC12細胞の突起伸展活性は抑制されなかった。コントロールとして行ったNGFを添加した系に、抗NGF抗体を加えたものでは、ほぼ突起伸展活性が抑制されたことから、スピロテヌイペシンAがグリア細胞に作用して、分泌を促進した神経栄養因子は、NGFで無いことが明らかとなった。さらに、ネオビブサニン類は、NGFの作用を増強し、神経突起伸展促進活性を示すことから、ネオビブサニン類共存下に、スピロテヌイペシンAより分泌された物質の活性を評価したところ、神経突起伸展促進活性は観測されなかった。この事実も、グリア細胞から分泌された活性物質がNGFで無いことを支持した。一方、グリア細胞からの分泌が知られているGDNFは、PC12細胞に対して、突起伸展活性を示さないことが明らかとなっており、GDNFも候補から外れた。neurotrophin-3、 neurotrophin-4もまた、グリア細胞からの分泌が知られており、これらがスピロテヌイペシンAにより、グリア細胞からの分泌を促進される活性物質である可能性も考えられる。一方、より高活性なスピロテヌイペシンA誘導体を創製する目的で、構造活性相関研究を行った。その結果、スピロテヌイペシンAに含まれる二つ水酸基とシクロヘキセン環が活性発現に必須であることが明らかとなった。この知見を基に、容易に合成可能なスピロテヌイペシンA類似体を新たに設計し、現在、その合成と活性評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光学活性スピロテヌイペシンAの合成研究では、当初予定していた合成ルートでの中間体合成が達成できておらず、合成ルートの変更を種々検討した。現在見出した別法での合成が進んでおり、目的の鍵反応は、当初予定を遅れているものの実施できる状況である。スピロテヌイペシンAとネオビブサニン類による神経突起伸展に関わる二重活性化法の検討に関しては、スピロテヌイペシンAによって生合成が促進される神経栄養因子が、NGF, BDNFで無いことが明らかとなり、当初期待したスピロテヌイペシンと(NGF, BDNFを増強する活性を持つ)ネオビブサニン類を相乗的に用いる方法は、有効で無いことがわかった。現在、それぞれ別の経路で神経突起伸長作用を示すことがほぼ確定できたことから、二重投与による活性化効果を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)スピロテヌイペシンAの不斉合成: 改良した合成ルートにて合成した中間体を用いて、鍵反応となるアイルランドークライゼン転位反応を実施して、計画した遠隔不斉転写が起こるか検討する予定である。その後、全合成にむけて計画を進める。 2) 活性評価:ラセミ体のスピロテヌイペシンAの合成が完了したことから、これを用いてネオビブサニン類との二重投与による神経突起伸展活性の評価を細胞レベル(ラット初代培養大脳皮質細胞)で実施すると共に、神経突起伸展に関わるシグナル伝達物質の変化を観察する予定である。 3) 高活性スピロテヌイペシンA誘導体の創製:これまでの構造活性相関研究の結果から、活性発現に必要な官能基を有し、かつ合成が容易と思われる類似体を設計した。今後、その合成と活性評価を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成計画の変更等により、研究計画がやや遅延したことに加えて、新たに見出された結果に応じて、研究方法をやや変更したこと、さらに、新型コロナウイルス感染症対策のための、研究室で同時実験する学生人数を制限したことも間接的には影響したと考えられる。主に遅延している、スピロテヌイペシンAの不斉合成研究に、翌年持ち越し分の研究費を使用する予定である。
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