研究実績の概要 |
本研究では、計算化学主導型の有機分子触媒の開発を実施し、嵩高いルイス酸とルイス塩基からなるFLP触媒を創成し、ケトン基質を用いた不斉水素化に適用し、不斉収率90% ee以上を達成することを目的にした。 R4年度に開発した新規不斉アミンとルイス酸としてアキラルなパーフルオロアリールボランを組み合わせた不斉FLP触媒によるアセトフェノンの水素化反応では、低収率、かつ、30%ee程度の低いエナンチオ選択性という結果しか得られなかったため、R5年度では設計を大幅に変更し、ルイス酸である新規不斉アミンを不斉ホスフィンに変え、計算設計を行った。計算により、ビナフチル骨格を有する新規不斉ホスフィンを設計し、まず合成の検討を行った。立体的にかさ高くないビナフチルの3,3'位がプロトンの不斉ホスフィンは収率よく合成できたが、3,3'位にフェニル基を導入し嵩高くした不斉ホスフィンの合成は難易度が高く、検討に時間がかかったが、低収率ながら合成することに成功した。これら開発した新規不斉ホスフィンとルイス酸としてアキラルなパーフルオロアリールボランを組み合わせて不斉FLP触媒によるアセトフェノンの水素化反応を行ったところ、3,3'位がプロトンの不斉ホスフィンを用いた場合にはわずか10%eeという低いエナンチオ選択性であったが、3,3'位にフェニル基を持つ新規不斉ホスフィンを用いた場合には、60%eeまで不斉収率が向上した。3,3'位の置換基が不斉収率に大きくかかわっていることが見出されたため、フェニル基より嵩高い置換基を持つ不斉ルイス塩基の合成に着手したが、現時点で合成は未完である。
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