研究実績の概要 |
研究代表者は、2021年にα-アミノマレイミドとN-トシルイミンのマンニッヒ反応を開発した(CL,2021, 50, 1607.)。この反応では、基質由来のマレイミド骨格がそのまま保持されるため、マレイミド誘導体の優れた合成法となる。そこで、α-アミノマレイミドとN-トシルイミンの不斉マンニッヒ反応を詳細に検討したところ、最高98% eeの高いエナンチオ選択性で対応する付加生成物が得られることを明らかにした(BCSJ, 2024, 97, in press)。 第一級アルコールの速度論的光学分割は、不斉誘導が一般に困難であり、報告例が極めて少ない。そこで、β位に官能基を有さない第一級アルコールの速度論的光学分割を達成するために新規有機分子触媒の設計・開発を行ったところ、(S)-プロリンから簡便に誘導される剛直な平面構造のジヒドロベンゾイソキノリン骨格を有するキラル1,2-ジアミンを1 mol%用いるだけで、第一級アルコールが最高s値19、95%eeの高いエナンチオ選択性で得られることを見出した(JOC, 2022, 87, 4468.)。 対称-1,2-ジオールの不斉アシル化による非対称化は数多く報告されているが、有機分子触媒を用いる不斉シリル化による非対称化は例が極めて少ない。研究代表者は、アルコール類の触媒的不斉アシル化反応を開発し、わずか 0.5 mol%のキラル1,2-ジアミン触媒を用いるだけで、最高で化学収率 83%, 光学収率 96% ee で対称-1,2-ジオールの非対称化が進行することを明らかにした。次に、不斉アシル化に続いて反応系内でシリル化、さらに脱ベンゾイル化を行ったところ、高い光学純度を保持したままキラルなモノシリルエーテルを得ることに成功した(BCSJ, 2022, 95, 1217.)。
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