研究課題/領域番号 |
21K05068
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
南保 正和 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (10705528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラジカル / スルホニル基 / 炭素-スルホニル結合活性化 / 1電子還元 |
研究実績の概要 |
電子求引基であるスルホニル基はa位官能基化による多彩な分子変換が容易であるが、最終段階で還元的に除去するのが一般的な利用法である。本研究では1電子還元による炭素-スルホニル結合開裂によってラジカル種の発生法を開発することで、有機合成化学上のスルホンの新しい活用法を開拓することを目的とした。まず第3級アルキルスルホンとアクリル酸エステルのGiese反応をモデル反応として、1電子還元を促進するスルホニル基上の置換基を検討した。その結果、テトラゾリル基を有するスルホンが有効であることを見出した。スルホニル基上の置換基として一般的に用いられているフェニル基やピリジル基では反応は進行せず、この傾向はスルホンの還元電位の値からも理解することができた。本反応に適切な還元剤として、亜鉛と1,10-フェナントロリン(phen)の組み合わせが重要であり、両者が共存することで1電子還元作用が発現することが分かった。実験および理論化学的手法によってphenラジカルアニオンが還元種であることを示唆する結果を得た。本反応条件は様々な第3級アルキルスルホンと電子不足オレフィンに適用可能で、第4級炭素を有するアルカン類を与えた。また本反応を分子内反応とすることでスピロ化合物を効率的に得ることも可能であった。 今回見出した亜鉛とphenを還元剤とする反応は非常に温和な条件でラジカル種を発生できる手法であるといえる。しかし過剰量が必要であることが課題であり、現在触媒的なラジカルの発生が期待できるフォトレドックス触媒の活用を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に計画した内容であるラジカル発生に有用なスルホニル基の開発を予定通りに実施できた。さらに2年目に予定している研究内容にもすでに着手し成果が得られつつあることから、達成度は(1)とした。
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今後の研究の推進方策 |
ラジカル発生法を様々な分子変換反応へ拡張する。官能基化されたオレフィンアルキン誘導体などの不飽和化合物の検討に加え、2量化反応やアリルシランなどのラジカル捕捉剤を共存させることによる2官能基化も試みる。またヘテロ原子を組み合わせたラジカルカップリングや、別の触媒サイクルと組み合わせたラジカルカップリングの開発にも挑戦する。基質となるスルホンはa位官能基化によって多様な2、3級スルホンを調製することが可能であり、反応性に与える影響も網羅的に調査できると考えている。またスルホニル基の修飾によって還元電位を制御し、より温和な条件でのラジカル発生も狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する予定であった外国人博士研究員が帰国することになり、研究の遂行に支障が生じたため使用額の差が生じている。本年度は博士研究員を雇用することがすでに決まっており、研究の遂行に支障はないと考えている。
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