研究課題/領域番号 |
21K05072
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
澤野 卓大 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80846303)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Metal-Organic Frameworks / UiO MOF / バイノール / 単座ホスフィン / 不均一系触媒 |
研究実績の概要 |
本研究課題である、「MOF触媒による遠隔配向基を用いた分子変換反応」を実現するためには、ビピリジンまたはバイノールなどの遷移金属錯体に結合するための適切なユニットをもつMetal-Organic Frameworks (MOFと省略する)の合成を達成することが必要である。また、MOFを用いた高効率的な不均一系触媒を実現するためには、反応条件下でMOFが安定であることが重要である。そこで、まずは安定な構造として知られているUiO構造をもつ、バイノールを基盤としたMOFの合成に取り組んだ。UiO MOFは2つのカルボン酸をもつ有機化合物(有機リンカー)とジルコニウムから合成される。 新たな有機リンカーを設計・合成することでバイノールを基盤とした新規UiO MOFの合成に成功した。バイノールは遷移金属触媒反応において重要な配位子の一つであることから、バイノールを基盤としたUiO MOFを合成できたことは本研究課題を達成するためだけでなく、様々な高活性な不均一系触媒を実現するために重要であると言える。 また、合成したバイノールを含むMOFが想定している構造をもつかどうか確認するために粉末X線結晶構造解析を行なったところ、UiO構造に特徴的なピークを示したことから想定していたMOFの構造をもつことが確認できた。 遷移金属錯体に結合できるユニットとして、単座ホスフィンも魅力的である。そこで、単座ホスフィンを有する新規UiO MOFの作成にも取り組んだ。これまで十分な反応スペースを有する単座ホスフィンを基盤としたUiO MOFは達成されていない。そこで、単座ホスフィンを有する新たな有機リンカーを設計・合成し、MOFの作成に用いたところ単座ホスフィンを有する新規MOFの合成に成功した。また、目的の構造が得られていることは粉末X線結晶構造解析により確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は目的としていたバイノールを基盤としたMOFの合成を行うために、まずは材料となるバイノールを含む新規有機リンカーの合成に着手し、合成を行うことができた。また、合成したバイノールを含む有機リンカーとジルコニウムを混合することで、バイノールを基盤としたUiO MOFの合成を行うことにも成功した。加えて、単座ホスフィンから構成される十分な反応空間をもつ安定なMOFを新規有機リンカーから合成することにも成功している。以上の理由から、本研究課題は概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
バイノールや単座ホスフィンを含むUiO MOFの合成に成功したことから、まずはこれらのMOFを用いて遠隔の官能基を利用した分子変換反応の達成を試みる。具体的には、ヒドロキシ基を官能基としたアルケンのエポキシ化反応にまずは取り組む予定である。ヒドロキシ基近傍のエポキシ化反応は香月ーSharplessエポキシ化反応としてよく知られているが、ヒドロキシ基から非常に離れた位置でのエポキシ化反応はこれまで実現していない。続いて、既知の合成法に基づいてビピリジンを有するUiO MOFを合成し、窒素原子を配向基としたアリール基のC-Hホウ素化反応の達成を試みる予定である。窒素原子近傍のC-Hホウ素化反応はよく知られている一方、超遠隔位でのC-H ホウ素化反応は達成されていない。 続いて、UiO MOF以外のMOFを用いた触媒反応を行い、MOF触媒の違いが反応性に与える影響について検討を行なっていく。遠隔の官能基を配向基とした分子変換反応を実現させるためには、MOFの構造が重要であると考えられる。 得られた触媒反応の結果を評価するためには、MOFの性質について解析を行なうことが必要不可欠である。BET、TGA、X線結晶構造解析などを行うことで、MOFの構造と触媒活性についての議論を行なっていく予定である。また、反応後のMOFの粉末X線結晶構造解析を行い、反応中にMOFの結晶性が失われているかどうか判断し、その情報をもとにMOF触媒の反応性に関する議論を深めていく。 MOF触媒は不均一系触媒であるため、再利用することが可能である。触媒反応後に遠心分離によって回収し、再利用可能であるか確認する実験も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
カラムクロマトグラフィーや蒸留の手法を工夫することなどにより、溶剤の使用量を想定よりも減らすことができたことから、次年度繰り越しの金額が生じた。 交付申請書に記載したように、本年度は助成金を本研究課題を達成するために必要な物品費に使用する予定である。具体的には、有機溶剤、試薬、NMR用の重水素溶媒などの消耗品、ナスフラスコなどのガラス器具、嫌気下条件で実験を行う際に使用するアルゴンボンベなどを購入するために使用することを計画している。また、今年度は50万円を超えるような物品の購入予定はない。
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