研究課題/領域番号 |
21K05073
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山田 徹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40296752)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロ波特異効果 / 触媒的不斉合成反応 / 反応加速 / 熱環化反応 |
研究実績の概要 |
有機合成反応に対するマイクロ波作用は,熱的効果のほかにマイクロ波特異効果の存在が議論されてきた。申請者は触媒的不斉合成反応へのマイクロ波適用により,熱的効果と特異効果を分離することに成功した。さらにアトロプ不斉化合物のラセミ化追跡実験から特異効果発現機構は,マイクロ波による配座平衡活性化であるとの着想を得て,クライゼン転位反応,ナザロフ環化反応におけるマイクロ波照射併用による反応加速に成功した。本研究計画ではマイクロ波特異効果の適用一般化を目的として,環化反応を中心にマイクロ波照射併用で加速される反応系の開拓と,エネルギー収支を含めた定量的取り扱い,反応速度論解析により,有機合成化学におけるマイクロ波照射適用の指針を示し,有機合成反応開発の革新発展に寄与することを目指す。今年度は,これまでにマイクロ波特異効果により反応加速が認められている,銅触媒によるナザロフ環化反応に対して,触媒的不斉合成反応におけるマイクロ波効果の実証実験を行った。特に,ナザロフ環化過程に引き続くフッ素化反応により,活性メチン部分をフッ素置換する反応において,高いエナンチオ選択性が報告されており,この反応系において,エナンチオ選択性を損なわない反応加速の確認を試みた。また,マイクロ波による分子の配座平衡の活性化という作業仮説に基づいて,二分子的脱離反応におけるマイクロ波加速の検証を開始した。この反応では,塩基によりプロトンが引き抜かれる時に,脱離基がアンチペリプラナー配座をとることが必須であり,マイクロ波照射による反応加速のメカニズムによれば,加速効果の観測が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,フッ素化を伴う不斉ナザロフ環化反応を中心に検討した。これまでに70%ee程度のエナンチオ選択性を維持しながら反応加速が観測されることを確認しているが,参考にした論文では90%eeを越えるエナンチオ選択性が報告されている。現状では85%ee程度の再現にとどまっており,配位子の再設計を含めた反応系の再構築について検討した。さまざまな反応条件,配位子系の新規設計を試みたが,原著論文の結果を再現するに至っていない。ナザロフ環化反応をはじめとする熱環化反応として重要なDiels-Alder反応への展開では,引き続き,モデル反応とモデル基質の選定,設計を継続する。また,マイクロ波による分子の配座平衡の活性化という作業仮説に基づいて,二分子的脱離反応におけるマイクロ波加速の検証を開始した。まず,シクロヘキサン骨格における配座反転を鍵工程とする反応系へのマイクロ波照射適用を試みた。その結果,E2反応に加えてE1cB反応が併発することがわかり,モデル基質の再構築を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,ナザロフ環化反応におけるマイクロ波効果の検証では,触媒的不斉合成反応への展開において,安定して高いエナンチオ選択性を維持しながら反応加速が観測される反応系の実現を目指す。熱環化反応への一般化として,Diels-Alder反応に対する適用では,引き続き,モデル反応系の検討を行う。また,脱離反応への適用についても,モデル基質の再構築から検討する。
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