研究実績の概要 |
2021年度は新規実用的アライン前駆体である2-トリアゼニルアリールボロン酸が、シリカゲルによってアラインを発生することを報告した。 2022年度は様々な酸によっても2-トリアゼニルアリールボロン酸からアラインが発生することを見出した他、シリカゲルを用いる手法をカゴ状オリゴシルセスキオキサン(POSS)の修飾に応用した。 2023年度はシリカゲルを用いる手法の効率をさらに改善することに成功した。以前の手法においては、高収率を得るためには、親アライン体に対して過剰量のアライン前駆体を用いる必要があった。一方、2-トリアゼニルアリールボロン酸をピナコールと反応させてボロン酸エステルとした後、親アライン体とシリカゲルを加えるワンポット法により、過剰量の前駆体を用いなくても高収率が得られることを見出した。本手法によってより複雑なアラインを反応に組み込むことが可能になった。 さらに複雑な2-トリアゼニルアリールボロン酸を効率よく得るために、これまでに報告された例のない3-トリアゼニルアラインを利用した合成法を新たに報告した。即ち、ヨードフェニルトリフラート型のアライン前駆体から発生させた3-トリアゼニルアラインに位置選択的にアルキニル基を導入できることを見出し、様々なアルキニル基が置換した2-トリアゼニルアリールボロン酸を網羅的に合成することに成功した。得られたアライン前駆体は上記のワンポット法によって幅広い親アライン体との反応に利用できた。本手法は、3-トリアゼニルアラインの前駆体から二度のアライン反応を連続して行うことで多様な化合物の合成を可能としており、仮想的な化学種である1,2-ベンズジインの合成的応用の例としても興味深い。
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