研究課題/領域番号 |
21K05079
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武藤 慶 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (60778166)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パラジウム / 多成分反応 / 位置選択的 / 芳香族化合物 / 脱芳香族化 |
研究実績の概要 |
本研究では入手容易なブロモアレーン類の1,4位選択的な二官能基化反応の開発を目的とする。我々がこれまでに見出したパラジウム触媒によるブロモアレーンとジアゾ化合物、炭素求核剤との脱芳香族的1,4-二官能基化反応が本研究の礎となっている。しかし、これまでの手法では適用できる反応剤に制限があり、炭素求核剤にアリル金属種やマロン酸エステルしか適用できなかった。この課題解決に向け、まずはマロン酸の代わりに単純なケトンを求核剤とするブロモアレーンの1,4-二炭素官能基化反応をモデルとして触媒の再設計をした。その結果、パラジウムと用いる配位子の量論比や構造を改変することでケトンを求核剤としても反応が良好に進行することがわかった。 また、アミンを求核剤とした場合、ブロモナフタレンとジアゾ化合物とアミンが反応し、1-アルキル-4-アミノナフタレンが得られ、1,4-カルボアミノ化できることがわかった。多環芳香族臭化物に限られるが、広範なカルボアミノ化生成物が位置選択的に得られた。本手法を用いて、抗腫瘍活性をもつ生物活性物質の短工程合成も達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初に直面していた反応剤の制限を回避しうる反応条件を見いだすことができ、本触媒反応の中間体の性質に関する重要な知見を得ることができた。特に配位子の量論比が与える影響が大きく、反応剤の性質に応じてパラジウム触媒中間体の空き配座の制御が重要であることがわかった。また、ハロアレーンの1,4-カルボアミノ化も達成した。本カルボアミノ化を用いて生物活性物質の迅速合成もでき、反応の有用性も実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる反応剤の拡張を目指す。単純ケトンやアミンを求核剤とすることができたが、他のヘテロ原子求核剤は未だ用いることができていない。また、ジアゾ化合物を他の反応剤とすることも考えている。これらが実現すれば、真に一般的なハロアレーン類の1,4-二官能基化法が実現すると考えいている
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、反応開発に当たり触媒・配位子合成を計画していたが、予備的研究により市販触媒・配位子を用いて反応の進行が確認できた。この結果から、本年度は研究室に保有していた試薬を用いて研究を進めた。カルボアミノ化に関しては、収率に課題は残るものの、広範な1,4-カルボアミノ化生成物をすべて市販試薬から一段階で合成することができ、論文投稿に至った。次年度以降は課題の残る収率を改善しうる新規触媒の合成や、本結果をもとに新たな反応への展開をする。そのために、試薬やガラス器具などの消耗品費に未使用額を計上することを考えている。
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