研究課題/領域番号 |
21K05080
|
研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
梶原 康宏 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (50460283)
|
研究分担者 |
庄司 満 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30339139)
功刀 浩 帝京大学, 医学部, 教授 (40234471)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 13C-標識化合物 / うつ病 / 13C-呼気試験 / トリプトファン / 5-ヒドロキシトリプトファン |
研究実績の概要 |
うつ病は、脳内のセロトニンと密接な関係があるとされているが、脳内セロトニン量を直接、計測することは困難である。申請者らは、[1-13C]Trp呼気試験で主に抹消のキヌレニン経路の代謝を、[1-13C]5-HTP呼気試験で主に脳内のセロトニン経路の代謝をそれぞれ観測し、両者を併用することで、脳内セロトニン量を間接的に調べることを計画している。 本研究は、「〔1〕[1-13C]-L-tryptophan([1-13C]Trp)の簡便な合成法の確立とその合成法を応用した[1-13C]-L-5-hydroxytryptophan([1-13C]5-HTP)の合成、〔2〕[1-13C]Trpおよび[1-13C]5-HTPを用いた13C-呼気試験法の有効性の実証」の2つのプロジェクトから成る。研究2年目となる令和4年度の研究実施計画は、昨年度に引き続き〔1〕のプロジェクトを進めた。 無標識体のKCNとキラル補助剤を用いた不斉Strecker反応を鍵反応とする[1-13C]Trpと[1-13C]5-HTPの合成ルートの検討を行った。主な研究成果は、不斉Strecker反応のキラル補助剤の候補を絞り込み、Strecker反応の試薬の当量、溶媒、温度などの条件を固めることができた点があげられる。ただし、本反応の生成物であるアミノニトリルが不安定であることが分かり、スケールアップに耐えうる改善策やその次の工程であるアミノニトリルの加水分解でも、原料(アミノニトリル)の安定性に問題点を抱えていることから、まだ改善の余地を残している。詳細については【現在までの進捗状況】の項目で述べる。この他にも収率の改善が必要と考えられる工程はあるが、いずれも検討を重ねることで解決できる見込みである。 これらの諸問題を解決できれば、13C-標識化合物であるK13CNを用いた[1-13C]Trpと[1-13C]5-HTPの合成に小スケールで着手し、その後、〔2〕の13C-呼気試験法の検討を実施したいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
[1-13C]Trpと[1-13C]5-HTPの合成法において鍵反応となる不斉Strecker反応の原料となる2種のアルデヒドを収率良く大量スケールで合成した。続くStrecker反応では、TLC上で単一スポットのジアステレオマー混合物を与えるが、本反応は、熱力学的な平衡反応であり、反応時間を長く取ることでジアステレオマー比を向上させることが可能であった。ただし、生成物のアミノニトリルが不安定なことから収率の低下が高頻度で起こる問題点があることがわかった。収率良く生成物のアミノニトリルを得るため、不斉Strecker反応の種々の検討を重ねたところ、アミノニトリルのメタノール溶液が、酸や塩基の添加をすることなく、中性条件下においても熱力学的な平衡反応によってジアステレオマー比が最大6:1まで向上できることがわかった。続くアミノニトリルからアミノアミドへの加水分解反応では、原料のアミノニトリルが不安定で分解しやすいことが収率を下げる要因になっているが、生成物のアミノアミドは、2種のジアステレオマーのRf値が異なるため、比較的容易に分割可能であり、安定性も十分に高いことがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
残りの工程は、インドール環の脱保護、キラル補助剤の除去、アミドの加水分解の3工程だけで、さらに各反応の収率の向上を行うことで合成ルートが確立できるものと考えている。合成ルートの確立後は、13C標識源として、K13CNを用いた不斉Strecker反応を行うことで、〔1〕のプロジェクトの目的を達成でき、〔2〕のプロジェクトへと繋げていきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究実施計画の立案時では、全ての工程が順調に進むものという前提で考えていたが、実際には改善を要する諸問題が生じた。そのため、13C-標識化合物であるK13CNの購入量を抑え、大半の購入を令和5年度へと先延ばしにした。一連の諸問題は、時間を重ねることで解決向かっており、今後、差分ができるだけ埋まるように運びたいと考えている。
|