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2021 年度 実施状況報告書

第一遷移金属錯体の配位子脱着を利用した高効率二酸化炭素還元光触媒

研究課題

研究課題/領域番号 21K05082
研究機関群馬大学

研究代表者

竹田 浩之  群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70647065)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードCO2還元 / 光触媒 / Fe錯体 / 第一遷移金属元素 / ビピリジン配位子
研究実績の概要

本研究の目的は、「第一遷移金属錯体の弱い配位能による配位子の脱着」を積極的に利用するという新たな戦略に基づき、中酸化状態の第一遷移金属錯体による特異な高効率CO2還元光触媒系を構築することである。これにより、地殻中豊富に存在する金属種を触媒とし、大気中CO2の資源化を高効率に進行させられることが期待される。
今年度は、Fe(II)イオン(M)に、保護剤(P)としてトリエタノールアミン(TEOA)を混合し、さらに電子プール(L)として2,2'-ビピリジン(bpy)配位子を混合することによりCO2還元「混合触媒」として動作することを見出した。CO2還元能の評価には、発光性Cu(I)錯体光増感剤と、還元剤共存下において光照射することにより行った。この際のCO2還元光触媒反応の効率から「混合触媒」の特性を評価した。
今年度は特に、電子プールとなるbpy配位子への置換基導入を行い、置換基の違いによるCO2還元触媒能の影響を評価した。まず、主骨格として、bpyの6,6'位にMe基を導入し、その立体的効果によりFeイオンへの配位能を適度に弱める触媒設計を行った。次に、4,4'位に種々の電子的効果を有する置換基を導入した。この結果、無置換のものに比べ、電子求引性置換基の導入によりCO2還元の効率が向上することを見出した。
これら電子プールとなるbpy系配位子の電気化学測定を行った結果、電子求引性置換基を導入することにより、還元電位の正側シフトが観測された。これにより、Cu(I)錯体光増感剤からの光電子移動が進行させられるようになったこと、および電子プールに蓄積された電子がCO2還元に必要な十分な電位を有していたことがCO2還元能を発現した原因であることが強く示唆された。すなわち、「混合触媒」のCO2還元に対する過電圧を、bpy系配位子への電子求引性置換基導入により減少させられることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は、装置の導入と、電子プール(L)の最適化、およびLのプロトン共役電子移動(PCET)特性の評価を計画した。これに対し、装置(光触媒反応のための光照射装置、金属錯体の電気化学特性を評価するための電気化学測定装置、および生成物の分析装置)の購入・設置・立ち上げと、目的とする光触媒反応の定量的評価を可能とすることができた。さらに、当初計画していたFeイオンを中心金属とした「混合触媒」の構築を行い、これまでFe触媒にLとして用いられてきた2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン(dmphen)系配位子のみならず、6,6'-ジメチル-2,2'-ビピリジン(dmbpy)系配位子でも同様のCO2還元光触媒反応が進行すること、さらには、この際に適度な電子的効果を有する置換基をビピリジン系配位子に導入することで、光触媒反応の効率が向上することを新たに見出すことができた。また、電気化学測定の結果からは、今回見出したdmbpy系では、dmphen系に比べ、当初予想していたPCETの効果が弱いことが示唆された。このことは、dmbpy系ではプールされた電子が、CO2還元に十分なエネルギーを有していることを示唆しており、今後の高効率な触媒設計に有利に働くことが予想された。

今後の研究の推進方策

2年度は、MとしてFe(II)イオンと、Lとしてbpy系配位子への置換基導入により、CO2還元触媒能のさらなる高効率化を目指すとともに、保護剤(P)と、金属種Mの検討を行う。Pとして文献調査によりカテコール系の多座配位子や、ポリビニル系の多座配位子を候補として検討する予定である。Mには、第一遷移金属種Cr, Mn, Co, Ni, Cuを用いたCO2還元触媒能の検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

電気化学測定装置の購入に際し、予定していたよりも安価で高性能のものを購入できた。また、中古のガスクロマトグラフを購入することにより経費の削減が行えた。さらに、参加した学会がオンラインに変更となったため、旅費を使用しなかった。次年度への繰越額は、試薬や、装置の交換部品購入に充てる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Heteroleptic Cu(I) Phenanthroline Complexes Bearing Benzoxazole and Benzothiazole Moieties for Visible Light Absorption2022

    • 著者名/発表者名
      Takeda Hiroyuki、Shimo Makoto、Yasuhara Gai、Kobori Ken、Asano Motoko S.、Amao Yutaka
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 51 ページ: 69~72

    • DOI

      10.1246/cl.210583

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Highly Functional Dinuclear Cu<sup>I</sup>-Complex Photosensitizers for Photocatalytic CO<sub>2</sub> Reduction2021

    • 著者名/発表者名
      Takeda Hiroyuki、Monma Yu、Ishitani Osamu
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 11 ページ: 11973~11984

    • DOI

      10.1021/acscatal.1c03336

    • 査読あり
  • [学会発表] Feイオンとビピリジン系配位子の混合触媒を用いたCO2還元光触媒反応2022

    • 著者名/発表者名
      黒須 雅雄, 竹田 浩之, 浅野 素子
    • 学会等名
      日本化学会 第102春季年会 (2022)
  • [学会発表] ヘテロレプティック型Cu(I)ビピリジン錯体を光増感剤としたCO2還元光触媒反応2022

    • 著者名/発表者名
      竹田 浩之, 髙橋 昂平, 並木 優衣, 浅野 素子
    • 学会等名
      日本化学会 第102春季年会 (2022)
  • [学会発表] Efficient Photocatalytic CO2 Reduction Using Abundant Metal Complexes2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Takeda, Kazuhide Koike, Osamu Ishitani
    • 学会等名
      2021 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (PACIFICHEM2021)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 時間分解ESRから見たCu(I)錯体の最低励起状態の(π, π*)性2021

    • 著者名/発表者名
      下真, 安原凱, 藤田峻介, 竹田浩之, 浅野素子
    • 学会等名
      令和3年度 日本化学会関東支部 群馬地区研究交流発表会
  • [学会発表] Pt(II)ビス-ナフタルイミド錯体の発光状態のスイッチングと時間分解ESRスペクトル2021

    • 著者名/発表者名
      安原 凱, 小堀 健, 竹田浩之, 浅野素子, Xue Zhang, Jianzhang Zhao
    • 学会等名
      第32回配位化合物の光化学討論会
  • [学会発表] 電子求引基を導入したフェナントロリンCu(I)錯体の発光の温度依存性2021

    • 著者名/発表者名
      下真, 竹田浩之, 浅野素子
    • 学会等名
      第32回配位化合物の光化学討論会
  • [学会発表] チアゾール誘導体を導入した発光性ヘテロレプティック型Cu(I)フェナントロリン錯体光増感剤の可視光吸収2021

    • 著者名/発表者名
      竹田浩之, 下真, 安原凱, 小堀健, 浅野素子, 天尾豊
    • 学会等名
      2021年光化学討論会
  • [図書] 第5項 CO2還元を駆動する人工光合成技術, 二酸化炭素利活用技術~CO2削減に向けた最新研究~2022

    • 著者名/発表者名
      竹田 浩之(分担執筆)
    • 総ページ数
      270
    • 出版者
      情報機構
    • ISBN
      9784865022261

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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