研究実績の概要 |
社会の持続的発展のため、従来の多段階加熱・冷却過程を伴うエネルギー多消費型プロセスから脱却した、新しい省エネルギー型基礎化学品生産プロセスの創出が重要である。特に、持続的社会発展を見据えた低炭素社会実現のためには、「I. 省エネルギー性」に加えて、地殻上に豊富に存在する「II. CO2等の安定小分子の有効活用」、および化学品合成に際する還元剤や強塩基等の添加剤の併用を前提としない「III. 高い原子効率」、をそれぞれ満たす反応プロセス開発が極めて重要である。光化学反応が本来有する省エネルギー性と負荷即応性を活かしつつ、原子効率高く CO2 を変換し得る反応系を実現するためには、反応基質の直接光励起により生ずるラジカル活性種とCO2との反応場設計が有望と申請者は考える。 本提案では、CO2共存環境下において光化学的に発生させた活性ラジカル種を鍵中間体とすることで、犠牲還元剤や塩基の併用を必要とせず、温和な温度条件下で進行させることが可能なCO2の新しい資源化反応を開拓することを目的とする。特に、既に先行研究で得られた二置換芳香族炭化水素の犠牲還元剤および塩基フリーな光カルボキシル化に関する知見(Sci. Rep. 2018, 8, 14623., J. Org. Chem. 2021, 86, 959.)に基づき、各種一置換芳香族炭化水素とCO2との光反応性における二置換芳香族炭化水素との差異を見出し、一置換芳香族炭化水素特有のCO2との新しい反応を開拓する。
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