研究実績の概要 |
これまでに明らかにしたCpおよびCp*を支持配位子とする配位不飽和多核ルテニウム錯体の合成と反応性に関する知見をふまえ、よりかさ高い1,2,4-トリ-tBu-シクロペンタジエニル (Cp‡)をルテニウム上に導入した場合にについて調査した。 ジクロリド錯体(Cp‡Ru)2(mu-Cl)2をPh2SCH2で処理すると、ジクロリドメチレン錯体(Cp‡Ru)2(mu-Cl)2(mu-CH2) (3)が得られた(81%)。Cp*やCpを支持配位子とする2の類似錯体はこれまでに合成されていない。2をNaOHと反応させるとオキソメチレン錯体(Cp‡Ru)2(mu-O)(mu-CH2) (3)が得られ(40%)、3とNH2Phとの反応によりイミドメチリジン錯体(Cp‡Ru)2(mu-NPh)(mu-CH2) (4)が生成した(52%)。4を[FeCp2][OTf]で2電子酸化するとイミドメチリジン錯体[(Cp‡Ru)2(mu-NPh)(mu-CH)][OTf]2 (5)が得られた(29%)。また、3をHOTf及びNH2NH2と逐次的に反応させるとヒドラジド錯体[(Cp‡Ru)2(mu-NHNH2)(mu-CH2)][OTf] (6)が生成した。一方2をLi2Sで処理すると3に対応するスルフィドメチレン錯体(Cp‡Ru)2(mu-S)(mu-CH2) (7)が得られた(96%)。3、4、5、7はX線解析により構造の詳細を明らかにした。以上のように最終年度においてはCpおよびCp*の系では得られなかった2、3、7などイミド以外の架橋配位子を有する一連のメチレン錯体の合成に成功した。 3年間の研究により、Cp及びCp‡を支持配位子とする一連の新規配位不飽和多核ルテニウム錯体の合成に成功し、それらの構造と反応性に関する多くの知見を得たることができた。
|