研究課題
本研究では,研究課題名にある「多様な展開が可能な,配位結合によるポルフィリン組織化様式の提案」を行った.非共有結合によるフェイス・トゥ・フェイス構造をしたポルフィリン二量体は,ホスト化合物や触媒への応用が期待され,注目を集めている.本研究では,メソテトラフェニルポルフィリンのフェニル基のメタ位にビピリジンを導入したポルフィリンに,亜鉛イオンを添加することによって,配位結合によって形成するフェイス・トゥ・フェイス構造をした新規ポルフィリン二量体を見出した.溶液中の構造を分光学的,プロトンNMR,質量分析によって調べた.分光学的には,共同的な二量体形成挙動が見られることを見出した.これは,最初の亜鉛イオンがポルフィリンに結合すると引き続く亜鉛イオンの結合やもう一つのポルフィリンの結合が抑制されるが,一旦二量体が形成すると,引き続く亜鉛イオンの結合は促進されるということが原因であることをモデル計算によって推定した.プロトンNMRの環電流効果を用いたシミュレーションによって,このポルフィリンと亜鉛イオンの混合物は溶液中でフェイス・トゥ・フェイス二量体構造を形成していること,亜鉛結合部位は四面体錯体を形成していることなどを明らかにした.単結晶X線構造解析も明らかにでき,溶液中で推定した構造とほぼ同じ構造をしていることを示した.この二量体はそれまで報告されている銀イオンによる二量体に比べて安定なので,ホスト化合物や触媒への応用が期待できる.さらに,この二量体の分子設計は,二量体中のポルフィリン間の距離を変化させたり,二量体構造をさらに延伸して多量体にすることが可能な,多様な展開が可能となっている.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Applied Physics A
巻: 130 ページ: 172 (1-8)
10.1007/s00339-024-07336-7
https://www.chem.cst.nihon-u.ac.jp/~otsuki/otsuki.html