研究課題/領域番号 |
21K05091
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松尾 司 近畿大学, 理工学部, 教授 (90312800)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | テトレン / シレン / ゲルメン / スタネン / シリン / ゲルミン / スタニン / 立体保護基 |
研究実績の概要 |
本研究では、高周期14族元素-炭素多重結合化学種を合成し、特異な結合電子に由来する反応性の探究を通して、典型元素化合物に関する先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする。独自に開発したかさ高い「縮環型立体保護基(Rind 基)」を駆使して、高周期14族元素(ケイ素・ゲルマニウム・スズ)と炭素の二重結合化学種「テトレン」(シレン・ゲルメン・スタニン)を合成し、三重結合化学種「テトリン」(シリン・ゲルミン・スタニン)に変換する。これまでに見いだした先駆的知見を基盤として、学術的にも価値の高い「高周期14族元素-炭素多重結合化学種」を創り出し、分子構造や化学結合について解明するとともに、高度に分極した電子構造に由来する特異な物性や反応性を探究することを目的とする。 令和4年度は、種々のかさ高さの「縮環型立体保護基(Rind 基)」を有する Ge=Ge 二重結合化学種「ジハロジゲルメン」(Rind)XGe=GeX(Rind) (X = Br, Cl) の合成法を確立し、分子構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。溶液中では Ge=Ge 二重結合が開裂し、ゲルマニウム二価化学種「ハロゲルミレン」(Rind)XGe: (Ge = Br, Cl) として存在することを分光学的手法により明らかにした。 また、種々の「縮環型立体保護基(Rind 基)」を有するスズ二価化学種「ハロスタン二レン」(Rind)XSn: (Ge = Br, Cl) を合成し、Rind 基のかさ高さに応じて結晶中における会合状態が変化することを明らかにした。 「ハロゲルミレン」や「ハロスタン二レン」の存在下、「ハーフペアレント型ジアゾメタン」の光反応について調査した。Ge=C 二重結合をもつ「ブロモゲルメン」が生成することを明らかにし、分子構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高周期14族元素-炭素二重結合化学種を合成する上で鍵となる二重結合化合物「ジハロジテトレン」(Rind)XE=EX(Rind) (E = Si, Ge; X = Br, Cl) や二価化学種「ハロテトリレン」(Rind)XE: (E = Si, Ge, Sn; X = Br, Cl) の合成法を確立した。このうち、ブロモゲルミレン (Eind)BrGe: を用いて、「ハーフペアレント型ジアゾメタン」の光反応について調査したところ、Ge=C 二重結合をもつ「ブロモゲルメン」が生成した。ブロモゲルメンの分子構造を単結晶X線構造解析により明らかにしたことから、「(2) おおむね順調に進展している。」を選択した。「ブロモゲルメン」とルイス塩基との反応により、ゲルマニウム-炭素三重結合化合物「ゲルミン」への変換について調査できる状況にある。 一方、ケイ素-炭素二重結合化学種「シレン」やスズ-炭素二重結合化学種「スタニン」については、その生成は確認できていない。基質や反応条件について、さらに検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
種々の「ハロゲルミレン」を用いて、「ハーフペアレント型ジアゾメタン」の光反応を精査することにより、ゲルミレンとカルベンとのカップリング反応を最適化を行い、「ブロモゲルメン」の合成法を確立する計画である。合成した「ブロモゲルメン」と N-ヘテロ環状カルベン(NHC)などの種々のルイス塩基との反応性について調査し、「ゲルミン」の初合成にアプローチする。 また、「ジブロモジシレン」や「ブロモスタンニレン」とルイス塩基との反応により、「ブロモシリレン・ルイス塩基付加体」や「ブロモスタンニレン・ルイス塩基付加体」を合成する。これらの速度論的にも熱力学的にも安定化された「ハロテトリレン・ルイス塩基付加体」を用いて、ジアゾメタン由来のカルベンとのカップリング反応について調査する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも順調に進展した研究内容、および、展開が遅れている研究内容があり、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、次年度使用額が発生しました。 当初の研究計画の見直しや修正を行うことで、翌年度分として請求した助成金と合わせて、適切に使用する計画です。
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