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2021 年度 実施状況報告書

架橋スルフィド配位子を有する三核錯体によるアニリンの直截的合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K05096
研究機関東京工業大学

研究代表者

高尾 俊郎  東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00313346)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードアンモニアの活性化 / N-H結合切断 / C-N結合形成 / 三核ルテニウム錯体 / アニリン合成
研究実績の概要

三重架橋スルフィド配位子を有するジカチオン性ベンザイン錯体とアンモニアとの反応によりジカチオン性架橋アミド錯体を合成し、その構造を明らかにした。電子不足な金属中心に配位することでアンモニアのN-H結合の酸性度は増加し、そのためにヒドリド配位子との間でのヘテロリティックなN-H結合の切断と水素の脱離が速やかに進行したものと考えられる。多核反応場での炭素-窒素結合の生成を目指して様々な塩基との反応を検討したが、水素化ナトリウムを用いた場合に脱プロトン化と水素化が進行し、ベンザイン配位子が三重フェニルイミド配位子へと変換されることを明らかにした。得られた三重架橋フェニルイミド錯体は配位飽和であり、そのために水素とは反応せずアニリンは生成しなかった。プロトン化によって配位不飽和種の生成を試みたが、カチオン性イミド錯体も水素とは反応しなかった。しかし、カチオン性フェニルイミド錯体に硫黄を作用させることで定量的にアニリンが脱離することが明らかとなった。多核反応場での炭素―窒素結合形成段階の中間体を観察することはできなかったが、フェニルイミド錯体を2電子酸化することで想定される中間体と類似の構造をもつジカチオン性のアザジルテナアリル錯体が得られることを明らかにした。残念ながら単結晶X線構造解析は成功していないが、各種分光データおよびDFT計算によりその構造を確認した。
また、モノカチオン性の三重架橋トリスカルベン錯体は求核剤とは一切反応しないが、465 nmの光を照射することでアンモニアとは反応し、N-H結合の切断と同時にC-N結合形成反応が進行し、アザルテナシクロペンタジエン錯体が得られることを明らかにした。炭素三員環のπ*(CC)軌道への電子移動によって金属上が電子不足になるとともに炭素三員環骨格が開裂し、アンモニアの取り込みが促進されたものと思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通りジカチオン性クラスターを用いることでアンモニアが速やかにクラスター上に取り込まれることを実証することに成功した。また、生じたアミド配位子を脱プロトン化することでベンザイン配位子との間で炭素―窒素結合が形成することも確認できた。残念ながら、中間体を単離することができず、その機構は明らかにできていないが、アニリンとの反応から中間体と類似の構造を有する化合物を合成することに成功し、機構解明に関して大きく前進した。クラスター上の水素化によるアニリンの脱離については達成できなかったもののS8を用いることで定量的なアニリンの遊離が確認でき、化学量論的な反応ではあるもののベンゼンとアンモニアによるアニリンの合成には成功し、芳香族化合物の変換反応における電子不足な多金属中心の有用性を示すことができた。今後は水素の取り込みを促進する多核反応場の設計を進め、職場違反のへの展開を図る。

今後の研究の推進方策

炭素―窒素結合形成の機構を明らかにするためにも中間体の補足は重要な課題である。三重架橋フェノキソ錯体生成の中間体としてシクロヘキサジエノンジイル錯体が単離されているが、類似のイミン錯体が生じているものと想定される。三重架橋フェニルイミド錯体の2電子酸化によって得られたアザジルテナアリル錯体の脱プロトン化によって想定する中間体が得られるものと思われる。フェニル基のp位に電子求引性の置換基を導入することで中間体を安定化し、その単離を試み、同時にその反応性を明らかにする。また、ベンザイン配位子に電子求引生基を導入することで分子内求核付加を促進することで中間体の単離を試みる。
フェノキソ配位子に比べてイミド配位子は三重架橋を好むためにクラスター上に空配位座を生じにくいことが明らかとなった。水素化によるアニリンの生成を達成するためにもクラスター上に配位不飽和座を発生させることは不可欠である。そこで、今年度はイミド配位子の反対側に位置する三重架橋スルフィド配位子に着目し、硫黄に対する親和性の高い銅錯体を導入することでスルフィド配位子の架橋様式を変化させ、クラスター上への水素の導入を試みる。
また、三重架橋トリスカルベン錯体の反応ではアンモニアの取り込みに光照射が有効であることが示唆されたが、ベンザイン錯体の光特性については未調査であった。ベンザイン錯体の光特性を調べ、光反応によるアンモニアの取り込みについても検討を開始する。

次年度使用額が生じた理由

購入を予定していた試薬の在庫がなく2021年度内での購入を見送り、2022年度に購入することとしたため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Formation of an Azaruthenacyclopentadiene Skeleton via Ammonia Activation by an Electron‐Deficient Ru <sub>3</sub> Cluster2022

    • 著者名/発表者名
      Takao Toshiro、Takahashi Yuta、Kai Masataka
    • 雑誌名

      Chemistry ? A European Journal

      巻: 28 ページ: -

    • DOI

      10.1002/chem.202200327

    • 査読あり
  • [学会発表] Reactivity of a Dicationic Triruthenium Benzyne Complex with Ammonia Resulting in C-N Bond Formation2021

    • 著者名/発表者名
      Masataka Kai, Toshiro Takao
    • 学会等名
      第67回有機金属化学討論会

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公開日: 2022-12-28  

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