研究実績の概要 |
本研究は、有機物の還元反応に用いられ、特に二酸化炭素の多電子還元の実現において最も重要な鍵化学種であるヒドリド (H-) を再生可能な条件で生成できるシステムの構築を目指したものである。電力と水により再生可能なヒドリド種を生成しうる金属錯体を設計・合成し、有機物の高効率な還元、すなわち自然エネルギーの有機物への貯蔵、および二酸化炭素の多電子還元によるメタノール生成を実現するための技術開発を目的とする。令和3年度は、本研究の目的に沿ったNAD+/NADH型酸化還元能を示すユニットを配位子に含む金属錯体の創製を目指し、2-(2-ピリジル)ベンゾ[b]-1,5-ナフチリジン(pbn)、ジベンゾ[c,h]-1,9,10-アンチリジン(dbanth)およびその誘導体(dbanthCl2)の合成を行い、これらを配位子にもつ新規金属錯体の合成について検討を行った。 dbanthおよびdbanthCl2を、既報をモデファイした方法により合成し、これらを配位子とする新規金属錯体の調製に取り組んだ。[RhCl3(tpy)] (tpy = 2,2':6,2"-ターピリジル)、[IrCl3(tpy)]、[RuCl2(CO)2]n、[RuCl2(dmso)4]などの錯体に対してdbanthを反応させ、生成物の構造について検討した。[RhCl3(tpy)]との反応では、dbanthを架橋配位子とする二核構造をもつ錯体が得られた。 pbnは、以前の筆者らの研究により、NAD+/NADH型の酸化還元システムを実現する上で有望な配位子であることが見出されている。筆者らによって以前開発されたpbnの合成方法は、7段階を要し、且つ反応試薬として毒物を用いる必要があるなど、改良の必要があった。そこで、研究協力者である田中晃二・京都大学特任教授のグループで開発した合成方法を参考に合成を進めている。
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