研究課題
本研究では、還元能の高いポリオキソメタレート(POM)をアクセプター性分子に、ドナー性分子の一元状白金錯体を混合し、新しい分子性導体を合成することを目的とした。POMに、Keggin型Mo12核の[Mo12]と、Dawson型Mo18核クラスターの[Mo18]を、一元状白金錯体に、白金四核錯体の[Pt4]と白金-パラジウム三核錯体[Pt2Pd]を選び、集積化し、物性を追跡した。既に、合成に成功している-[Mo12]-[Pt4]- (1)に加え、Keggin型POMと白金-パラジウム三核錯体から-[Mo12]-[Pt2Pd]- (2)を、Dawson型POMと白金四核錯体から-[Mo18]-[Pt4]- (3)を得た。単結晶X線構造解析から1~3のいずれも、POMと一元状白金錯体が1:1で並び、POM中の架橋酸素原子と、末端白金原子は、3.4Åほどで接近していた。また、一元状白金錯体中の金属間距離は、1中の白金複核錯体内は2.81Å、複核錯体間は2.90Å、2中の白金-パラジウム間距離が2.7Å、3中の白金複核錯体内は2.74、2.81Å、複核錯体間は2.84Åであり、いずれも原料錯体から酸化していると考えられる。XPSおよび元素分析の測定結果を考慮すると、1~3中の金属酸化数は、1が-[Mo12(+6)]-[Pt4(+2.25)]-、2が-[Mo12(+6)]-[Pt2Pd(+2.33)]-、3が-[Mo18(+6)]-[Pt4(+2.25)]-と考えられ、混合原子価状態をとると考えられる。粉末でのESR測定の結果、いずれもアクティブで不対電子を有しており、極低温から常温までの結果、1は極低温で観測されたMo12 dxyスピンとPt4 dz2スピンのシグナルが、常温でブロードなシグナルへと統合され、不対電子が一次元集積体上を非局在化していることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
計画段階で目的としていた、ポリオキソメタレートと一元状白金錯体による一次元集積体を、3種類、単離することができ、その単結晶X線構造解析に成功したため。また、3種類の一次元集積体のいずれも、良導電体の必要条件である混合原子価状態をとることが、各物性測定でわかったため。
初年度に単離した混合原子価一次元集積体の1~3の伝導度を測定する。具体的には、ペレットを作成し、極低温から常温までの直流伝導度測定およびインピーダンス測定をする。また、バンド構造を、結晶構造をもとにした第一原理計算によって明らかにする。さらに、光伝導性測定および励起ESR測定も検討し、平行して、新規の混合原子価集積体の合成も進める。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
Inorganic Chemistry
巻: 61 ページ: 5762~5778
10.1021/acs.inorgchem.1c03848
Dalton Transactions
巻: 51 ページ: 946~957
10.1039/D1DT03537A
X-ray Structure Analysis Online
巻: 38 ページ: 25~26
10.2116/xraystruct.38.25
Journal of Molecular Structure
巻: 1250 ページ: 131694~131694
10.1016/j.molstruc.2021.131694
ACS Omega
巻: 6 ページ: 18487~18503
10.1021/acsomega.1c02634