研究課題
本研究では、還元能の高いポリオキソメタレート(POM)をアクセプター性分子に、ドナー性分子の一元状白金錯体を混合し、新しい分子性導体を合成することを目的としている。POMに、Keggin型Mo12核の[Mo12]と、Dawson型Mo18核クラスターの[Mo18]を、一元状白金錯体に、白金四核錯体の[Pt4]と白金-パラジウム三核錯体[Pt2Pd]を選び、前年度までに、一次元状集積体の-[Mo12]-[Pt4]- (1)、-[Mo12]-[Pt2Pd]- (2)、-[Mo18]-[Pt4]- (3)の合成、単結晶X線構造解析と物性評価を終えている。今年度は、伝導度測定とバンド計算を実施した。1~3のペレットを作成し、二端子法による直流電気伝導度測定したところ、常温での抵抗率が、1は3.8×10^7 Ωcm、2は4.3×10^6 Ωcm、3は9.1×10^5 Ωcmであり、比較的よく電気が流れることがわかった。また、低温になるにつれ、抵抗率が上昇する半導体的挙動を示した。アレニウスプロットの結果、活性化エネルギーが、1は0.6 eV、2は0.5 eV、3は1.8 eVと見積もった。結晶構造をもとに,第一原理計算Wien2kで状態密度を算出したところ、いずれも、伝導帯をMoが、価電子帯をPt(Pd)が占め、結晶構造をもとにした電荷分布と電子スピン共鳴の結果と一致した。1~3では、抵抗率に温度依存性がみられ、電荷伝導に関係するMacrusパラメータを評価したところ、電子輸送と考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
計画段階で目的としていた、3種類の一次元集積体を単離し、伝導度測定およびバンド計算を完了でき、分子性導体となることを明らかにしたため。
混合原子価一次元集積体1~3の伝導度を単結晶四端子法で測定し、正確な導電率を明らかにし、異方的な導電性を評価する。さらに、光伝導性測定および励起ESR測定も検討する。1~3以外に、混合原子価二次元集積体の合成にも成功しているので、同様に固体物性を明らかにしていく。また、内包イオンと核数を変えたPOM、もしくは欠損型POMを用いて、新しい混合原子価集積体を探索する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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