昨年度までに、3種類の混合原子価一次元状集積体を単離し、その物性を明らかにした。今年度は、以下の方法で、2種類の二次元状集積体を単離することに成功した。Keggin型Mo12核の[Mo12]と白金四核錯体の[Pt4]を用い、1 mM : 1 mMもしくは1 mM : 2 mMで、40 mMのNaX(X = NO3-、ClO4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-)を加えた場合も含め、4つの条件で混合した。溶媒には、メタノール、エタノール、アセトン、THF、アセトニトリル、水の6種類を選び、合計144通りの条件を検討した。その結果、MeOH中2:1で混合すると、X = CF3SO3-から紫色の金属光沢を呈する暗緑色単結晶の4が、X = PF6-から暗緑色単結晶の5が析出した。単結晶X線構造解析の結果、4と5はともに、[Mo12]を節に[Pt4]が架橋し、二次元格子を形成していた。二次元格子同士は、4ではface-to-faceで、5では塞ぐように積層していた。4と5ともに、白金四核錯体中の白金間距離は[Pt4]5+に特徴的で、POM中のMo-O間距離から、[Mo12]は原料から還元して、4では[Mo12]4-、5では[Mo12]6-となり、4は-[Mo(+5.92)12]-[Pt(+2.25)4]2-、5は-[Mo(+5.75)12]-[Pt(+2.25)4]2-の金属酸化数をもった混合原子価状態と考えられる。4と5の、電子スピン共鳴測定をした。4では、常温の、g = 2.12のブロードなシグナルが、100 K以下で先鋭化し、より低温になると、軸対称シグナルと等方的シグナルへと、分裂する様子がみられた。一方、5では、全温度領域で、g1 = 2.40、g2 = 2.24、g3 = 2.16の三軸異方性のシグナルであった。
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