ポリオキソメタレートと白金多核錯体からなる混合原子価一次元集積体の導電物性

2023 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 21K05098
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 基金
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分34010:無機・錯体化学関連
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 植村 一広 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60386638)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: ポリオキソメタレート / 多核錯体 / 一次元鎖 / 金属結合

研究成果の概要

固体酸化触媒として工業利用されている球状の多核錯体のポリオキソメタレート（POM）は、多電子還元でき、還元電子は球上を非局在化するが、POM同士の相互作用が弱く、それ自身では電気が流れない。本研究では、一次元状の白金多核錯体でPOMを繋ぎ、3種類の一次元状混合原子価集積体の単離に成功した。いずれの集積体中の金属は混合原子価であり、不対電子が金属上に存在し、常温での導電率がPOMのみに比べ10万倍以上向上することがわかった。また、合成の過程において多様な類似体を得ることができ、構造次元性が二次元状の混合原子価集積体も見出せた。

自由記述の分野

金属錯体化学

研究成果の学術的意義や社会的意義

ポリオキソメタレートは古くから知られ、オレフィン水和反応における酸触媒、メタクリル酸合成の酸化触媒として工業的に利用され、水の酸化触媒等の多電子移動反応触媒の有望な候補となっているが、骨格自体を導電物性に利用している研究はほとんどない。本研究で見出した、ポリオキソメタレートと白金四核錯体からなる混合原子価集積体は非局在化した電子を有し、比較的電気が流れやすいと考えている。この集積体は、2つの調整可能な物質を混合して得られることから、バンド構造、電荷輸送能、光吸収帯をチューニングできる化合物群といえ、太陽電池などに利用できれば、学術的・産業的にも大きな波及効果が期待される。