研究実績の概要 |
本研究では、酵素活性中心のような緻密な反応場を構築し、異なる金属反応サイトを近傍に配置したヘテロ金属二核錯体を設計、合成し、常温常圧で高効率に二 酸化炭素からメタノールに直接変換することを目指す。本年度は、昨年度合成したヘテロ二核Ir-Ruの錯体をもとに、その骨格配位子であるHbpp(3,5-bis(2-pyridyl)pyrazolate)のピリジンの4位に異なる置換基(メトキシ基及びクロロ基)を導入し、合成に成功した。合成したヘテロ 二核Ir-Ru錯体を触媒に用いて、水素を原料に二酸化炭素の還元反応を評価した結果、2電子還元生成物であるギ酸を得た。6電子還元生成物であるメタノールの生成は観測できなかったが、クロロ基を導入したヘテロ二核Ir-Ru錯体が最も高いギ酸生成の活性を示した。それぞれの単核Ir錯体及びRu錯体と比較して、ヘテロ二核Ir-Ru錯体の方が高い二酸化炭素還元活性を示したことから、ヘテロ二核金属錯体による協奏効果を見出した。一方、ホルムアルデヒドを原料に用いた場合、ヘテロ二核Ir-Ru錯体触媒は、ホルムアルデヒドを還元し、メタノールの生成を確認できた。そのため、ヘテロ二核Ir-Ru錯体触媒を用いた二酸化炭素からメタノールの6電子還元反応では、ギ酸からホルムアルデヒドの還元が進行しなかったことを示唆した。また、水素、二酸化炭素の圧力や反応温度などの反応条件を最適化することで、ギ酸生成のターンオーバー数が2000回を超え、ヘテロ二核Ir-Ru錯体触媒による高い二酸化炭素の還元活性が得られた。
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