研究実績の概要 |
本研究では、有機金属錯体で構成される分子性結晶の構造変化に伴う物性を計算化学的手法により解析するため、結晶構造とその動的挙動の両方を再現することを志向した汎用的な古典力場の開発を進めている。 (1)青山学院大学長谷川グループらとの共同研究により、2つのビピリジンがエチレンジアミンで架橋された螺旋状の六座配位子を持つ一連の希土類錯体(Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm)について、遊離したイオン状態での希土類元素の非結合相互作用に関わる力場ポテンシャルを決定し、類縁化合物も含めた複数の既知結晶構造を再現することに成功した [Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 2973-2981]。 (2)星薬科大学米持・福澤グループとの共同研究により、フラグメント分子軌道(FMO)法を用いた結晶エネルギーの高精度化に取り組み、古典力場を用いて探索した2-((4-(3,4-Dichlorophenethyl)phenyl)amino)benzoic acidの結晶構造についてエネルギーの再評価を行ったところ、実測構造を安定構造として見出すことに成功した[J. Comput. Chem. Jpn. 2021, 20, 92-93]。 (3)北海道大学長谷川グループらとの共同研究により、分子結晶中での変形により連結して強い発光特性を示し、また中心金属である希土類元素が変わることで発光波長が大きく変化し、さらに異なる希土類元素の結晶同士を連結することで光情報を一方向に伝達することを見出した希土類錯体について、錯体が連結する過程において重要なピリジンの配位と、錯体単体での発光波長を、量子化学計算により解析することに成功した。[Nature Commun. in press]。
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