本研究では表面プラズモン電場に起因する局在光強電場を利用する(107倍以上の増強)「表面増強旋光度計測」法を開発することを目的とした。表面プラズモン共鳴効果により分子―光の相互作用を長時間化し、旋光度を増強し高感度に検出する。表面増強プラズモン共鳴(SPR)を発現する貴金属微粒子に旋光性を付与することにより、旋光度の変化,特にその増強による高感度測定について検討を行なった。また、これらは旋光性を有する分子がどのように吸着しているのか等、表面における分子の動的挙動をin situにて測定することが可能となる。 旋光度計の感度は、高くても0.002°程度であり一般的にミリモルのオーダーの溶液が必要になる。できるだけ正確な値を導くにはより高濃度溶液(1g/mLに近づける)が必要となる。簡便な旋光度計測では1%以下のエナンチオマーは通常検出不可能である.数マイクロモル以下を対象とする極微量な分子を選択的に検出するシステムの構築により、旋光度によるその場かつ迅速な測定が可能となる. 本系において、SPRアクティブな構造体への吸着を介することにより微量検出を可能とした。これは、旋光度増強が生じる場の形成ならびに分子との相互作用によるものと結論づけた。最終年度は、表面吸着の状態を確認するため前年度までに確認されたSPRアクティブな金微粒子上におけるキラル分子の旋光度の増大について詳細な検討行なった。その結果、通常物質固有の値である比旋光度は大きく変化することが明らかとなった。これらはSPRの強さとの明確な相関は見られず、むしろ物質固有の相互作用定数が存在することを示唆した。比旋光度に対し通常の旋光度の式に係数をいれることを検討したが、相関関係は明確にならなかった。しかし、その感度の高さから、SPRアクティブな材料をもちいることによって好感度に旋光度を測定できることが明らかとなった。
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