研究課題/領域番号 |
21K05109
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
巽 広輔 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (60336609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポーラログラフィー / インクジェット / 液体電極 / 電気化学測定 |
研究実績の概要 |
電子伝導体の粉末とバインダー液体とを混合して調製した液状電極を用い、電極表面の更新方法としてインクジェット技術を導入することにより、新しいポーラログラフィーを確立することが本研究の目的である。液状電極の吐出には、高粘度液体に適用できる特殊なインクジェット装置が必要であるが、申請時はこのレンタル品を用いていたため、短いレンタル期間中に液状電極を安定的に吐出するための十分な予備的検討を行なうことができなかった。2021年度はこれを一式購入し、引き続き液状電極を再現性良く吐出し電気化学測定するための条件について予備的検討を進めたところ、電流-電位曲線の測定に成功した。これは、インクジェットを用いて電極を更新しながら電気化学測定した結果としては世界初の試みである。これまでの実験結果をまとめ、ショートコミュニケーションとして成果を公表することができた。これと同時に、様々な電気化学測定に適用できるよう改良を重ねたところ、電極素材については、よりキャピラリーが詰まりにくいようなグラファイト粉末素材を見出すことができ、またそれをバインダー液体に分散させるための分散剤についても知見を得ることができた。また、これまでの予備的検討においてはキャピラリー部分における電気抵抗が無視できないことによるオーム降下が問題となっていたが、きわめて細いステンレス鋼線をキャピラリー内部に挿入することにより、オーム降下をある程度低減することが可能であった。これらの結果は、学会(いずれもオンライン)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずはインクジェット装置を用いて電流-電位曲線の測定に成功したという点では、当初計画していたことに対する一定の成果があったと考えている。通常のインクジェット装置では比較的高粘度の液体を吐出することができないため、以前からアイデアとして温めていたものの実現できなかったことが、高粘度液体の吐出のために特別に開発されたインクジェット装置を用いることにより解決できた点については、満足できる結果と言える。しかしながら、得られた電流-電位曲線は、オーム降下の影響を受け横方向に広がった形となってしまった。今後はこの点を改良する必要があると考えている。また、キャピラリーが詰まりにくいような電極素材の探索も、今後引き続き必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずはオーム降下の低減とキャピラリーが詰まりにくい電極素材の探索が直近の大きな課題であるが、引き続き2022年度もこの課題に取り組む。すでに多くの材料を試験しているが、さらに対象を広げて検討する。上記2点の問題が解消すれば、各種電極反応に対して電極反応速度を測定し、水銀電極での結果と比較検討する。結果を見て適宜、電極材料を銀などへ展開し、速度定数が電極材料によってどう変化するのかを検討する。
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