研究課題/領域番号 |
21K05119
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
茶山 健二 甲南大学, 理工学部, 教授 (10188493)
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研究分担者 |
岩月 聡史 甲南大学, 理工学部, 教授 (80373033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イオン液体 / 共抽出法 / イミダゾリウムイオン / 溶解度積 |
研究実績の概要 |
2021年度には色素分子の共抽出とイオン液体分子の分子構造との相関を検討した。フルオレッセイン或いはマラカイトグリーン等20種類の色素溶液に、BMIm等の陽イオン、Ntf2 等の陰イオンを加え、イオン液体を生成させ、イオン液体相への色素の分配を検討した。これは、①水溶液中よりイオン液体が生成する際に溶液中に共存する化学物質を共抽出し、分離する本法の、基本的な方法論を確立する研究の基礎部分である。 その結果、色素の化学構造、特に官能基の種類(スルホン酸基のような親水性置換基の有無、或いはアルキル期のような疎水性置換基の有無)と数により、イオン液体中に抽出される色素と水溶液中に分配し、イオン液体中には抽出されない色素に分類できることが明らかとなった。 従来のようにイオン液体を合成して、イオン液体抽出する方法では、陽イオンと陰イオンは常に1:1の比で共存するが、本法では、難溶性陽イオンあるいは陰イオン、いずれかの濃度を過剰に加えて、共通イオン効果により、非検体である色素イオンの分配比が増加(あるいは減少)することを確認できた。この時、色素の分配比Dとイオン液体生成平衡時の陽イオンあるいは陰イオン濃度の対数プロットから、抽出される色素が、カチオンの場合はイオン液体を構成する陰イオンをカウンターアニオンとして、また、逆に色素イオンがアニオンの場合は、イオン液体を構成する陽イオンがカウンターカチオンとしてイオン対を形成することが示唆された。 また、予め合成されたイオン液体との2相間分配と比較して、本法で用いる共抽出法を用いると抽出平衡に達する時間がかなり短縮されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、計画に沿って共抽出による色素の分配挙動を明らかにすることが出来た。また、その際に生成するイオン液体を構成する有機カチオン或いは有機アニオンの濃度変化に対して、色素の分配挙動を調べるところまで研究を進めることが出来た。これは、2022年度に行う予定の部分を先取りして行ったことを意味しており、想定以上に研究が進展していることを示している。 しかしながら、この結果は、まだ論文として公表されていないので、現在は論文執筆を急ぐとともに、さらなる抽出平衡解析を検討する必要があると考える。 また、共抽出で最も期待される高速抽出を顕著に表すような抽出系を見出し、抽出速度について検討する必要があると考える。 本法のメリットを3年目を待たず、微小流体デバイス作成のための準備を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
典型的なイオン液体であるブチルメチルイミダゾリウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド以外のカチオンおよびアニオンの組み合わせについても、2021年度に明らかにしたような抽出挙動を取るのかについて、検討する必要がある。 また、イオン液体のメリットでもあるプラスチックを侵さない性質を利用して、微小流体デバイスを作成するとともに、マクロの抽出系である共抽出において、分析の応用例に適用可能かどうかを検討する。その例として、海水中のリン酸イオンの分離濃縮定量にチャレンジする予定である。 これと同時に、デバイスの作成のための準備を行う。この計画を実行するためには、微小流体デバイス作成のノウハウが必要となるが、現在、産業技術総合研究所永井秀典博士の助力を仰ぎ、3Dプリンタによる、濃縮分離デバイスの作成に取り掛かる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は物品費を所要額まで使用するには至らなかったが、これは予想した物品の額が社会状況によって変動したためであり、本年度に使用することで研究計画に支障はない
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