研究課題/領域番号 |
21K05123
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平野 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70415735)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | microRNA / 細胞 / アンチセンス / 顕微鏡 / ncRNA |
研究実績の概要 |
microRNA(miRNA)は22塩基前後の短鎖ノンコーディングRNAであり、細胞内でmRNAと相互作用することで、細胞増殖などの基本的な生命現象を調整している。一部のmiRNAはがんなどの疾病を誘起することが知られていることから、miRNAに相補的なアンチmiRNAオリゴ核酸(anti-microRNA oligonucleotides, AMO)は医薬品としても期待されている。1本鎖のAMOは、細胞内にリポフェクションで導入されると核に蓄積する傾向があることから、細胞質で機能するmiRNAへの結合はわずかであると考えられる。一方、我々は、安定な2本鎖構造を有するAMOを開発し、高い活性を持つことを確認しているが、細胞内の安定性や局在を評価する手法がないことが課題になっていた。そこで、本研究ではAMOの細胞内の局在と活性の相関を評価することを目指している。今年度は、安定化2本鎖構造を含む、AMOに様々な化学修飾および、蛍光標識を導入し、細胞内での安定性や局在等の評価を進めた。具体的には、1本鎖のアンチセンス核酸の一方の末端に2本鎖構造、もう一方の末端に化学修飾等を導入して、細胞内動態を観察し、miRNA抑制活性との相関を評価した。その結果、安定化した2本鎖を5’末端に導入した場合、および3’末端に導入し、5’末端を化学修飾したAMOでは、細胞内での分解および核への移動が抑制され、高いmiRNA抑制活性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定化した2本鎖核酸の接続位置、2本鎖のサイズや配列、1本鎖部分の配列、末端修飾などの化学修飾についても検討することで、AMOの修飾部位に依存して細胞内局在を制御できる可能性が示唆されている。これらの結果を検証する研究をまず進め、得られた結果の成果発表を加速させる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、2本鎖核酸を接続した1本鎖核酸は、細胞質に局在する傾向があることを確認している。今後は、細胞質における局在とアンチセンス活性の相関について調べることで、構造や配列の異なるオリゴ核酸の細胞内動態に関する知見を集積し、より低濃度で作用する化学修飾を抑えた機能性核酸の開発に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに、1本鎖型のAMOの細胞内動態における予期せぬ結果が得られたことから、計画を見直し、事前準備などをやり直したため。
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