研究課題/領域番号 |
21K05130
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
末田 慎二 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (00325581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質間相互作用解析 / 蛍光イメージング / 培養細胞 / 平衡結合解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、培養細胞の表層を反応場として利用したタンパク質間相互作用解析系の構築することを目的としている。具体的にはターゲットとなる標的タンパク質を、膜タンパク質を介して培養細胞の表層に発現させ、そこに蛍光ラベル化したもう一方のタンパク質を添加して、両者の相互作用を蛍光イメージングにより解析する系の構築を目指している。今年度はまずタンパク質間相互作用のモデル系として、ビオチンリガーゼ(BPL)とその基質タンパク質(BCCP)を利用して相互作用解析系の構築を行った。ここでは、BCCPを膜タンパク質(TM)との融合タンパク質として細胞表層上に発現させ、その際にTMの細胞質側には蛍光タンパク質のmAppleを連結させた。その融合タンパク質を発現させた細胞に対して、蛍光色素(フルオレセイン)でラベル化したBPLを添加して観察を行った。その結果、細胞の輪郭からフルオレセインに由来する緑色の蛍光とmAppleに由来する赤色の蛍光が同時に観察され、期待通り細胞表層において、BPLとBCCP間の結合を観察することができた。さらにフルオレセインに由来する蛍光はラベル化BPLを添加後、速やかに一定レベルに達し、その蛍光レベルは少なくとも1時間程度は持続することが確認できた。その後、濃度の異なるラベル化BPL溶液を添加し、それぞれの条件下で蛍光強度を測定し、結合平衡解析を実施した。ここで細胞からの蛍光強度はBCCPを連結させた融合タンパク質の発現量に依存しているため、それを補正するために、フルオレセインに由来する蛍光強度をmAppleに由来する蛍光強度で割った値を結合レベルとして評価した。得られたデータをLangmuirの平衡式に基づいて解析を行ったところ、文献値に比較的近い結合パラメーターが得られ、本手法に基づいてタンパク質間の相互作用解析を実施することが可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビオチンリガーゼとその基質タンパク質間の相互作用をモデル系として相互作用解析系を構築し、実際に両タンパク質間の結合解析を実施することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質間相互作用のモデル系として、Rapamycin(抗生物質)によって促進されることがよく知られている、FKBP12とFRB間の結合を利用して解析系を構築する。ここでは FKBP12 を細胞表層に提示し、Rapamycin と共に蛍光タンパク質でラベル化した FRB を添加して評価を行う。具体的にはRapamycinの添加の有無によって、期待通りの結合挙動が観察できるかどうか検証すると共に、平衡解析により両タンパク質間の結合パラメーターの取得を行い、相互作用解析系としての精度の評価を行う。また、FKBP12と膜タンパク質の融合タンパク質のN末端にBCCPを連結させた発現系を構築する。そして、その融合タンパク質を発現させた細胞に対して蛍光ラベル化BPLを添加することにより、融合タンパク質のN末端部位が細胞表層に提示されていることを確認できることを示す。さらにより幅広いタンパク質間相互作用系に適用できることを示すために、レセプターとペプチド間の相互作用解析系も構築し、結合パラメーターを算出できることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の経費を学会発表の旅費として使用する計画であったが、当該学会がオンライン開催となったことが主な要因で残額が生じた。この残額分については、R4年度分の助成金と合わせて、物品費や旅費に充てる予定である。
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