研究課題/領域番号 |
21K05133
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
土戸 優志 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (40737219)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電荷移動錯体 / 蛍光 / メカノストレス / Charge-transfer complex / Fluorescence / Mechanostress |
研究実績の概要 |
本研究では、メカノプローブを導入した高分子を用いたメカノストレス検出法の開発を進めている。1年目である本年度はまず、非共有結合型の弱い分子間相互作用である電荷移動錯体に着目し、メカノストレスを検知するメカノプローブユニットとして用いる電荷移動錯体の合成を進め、その光学特性について評価した。また、この電荷移動錯体を高分子化し、その光学特性についても評価した。 1)電荷移動錯体の合成:電子ドナーのピレンと電子アクセプターのナフタレンジイミドを、適切な長さのリンカーを介して直列に結合した、電荷移動錯体を合成した。次に、この電荷移動錯体の両末端に対して重合反応をすることによって高分子化し、高分子主鎖内に複数のメカノプローブユニットを有する高分子を合成した。 2)電荷移動錯体の光学特性評価:1)で合成した各メカノプローブ分子について、それぞれ有機溶媒中に溶解し、電荷移動錯体の形成挙動を蛍光スペクトル測定によって評価した。その結果、合成したメカノプローブ分子はピレンに由来する蛍光が消光し、電荷移動錯体を形成していることがわかった。また、その蛍光消光の度合いはピレンとナフタレンジイミドの比率によっても変化することがわかった。同様にして、このメカノプローブユニットを導入した高分子の光学特性についても評価したところ、メカノプローブ分子を高分子化する前と同様に、ピレンに由来する蛍光が消光することがわかった。その蛍光消光の度合いは、メカノプローブ部分以外の高分子主鎖の分子構造によっても違いが生じることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、メカノプローブを導入した高分子を用いて、メカノストレスという物理的な情報を分光学的な情報に変換する手法を開発することである。初年度である2021年度は、メカノプローブとして用いる電荷移動錯体や高分子合成を中心に進めており、その光学特性についても詳細な検討を進めている。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請計画に従って2022年度の研究を進めていく。電荷移動錯体を構成するピレンとナフタレンジイミド間をつなぐスペーサー長と、電荷移動錯体の形成能との相関について明らかにしていく。また、これらの電荷移動錯体を主鎖に導入した高分子を合成し、メカノプローブ機能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は現地での学会開催予定であったが、開催形式がオンラインへ変更されたことに伴い、学会旅費・学会参加費などの経費が大幅に抑えられたこと、およびコロナ禍による研究資材の購入計画に遅れが生じたことなど、複数の理由により次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、2年目の研究推進において必要となる消耗品や用品の購入、情報収集・研究成果報告のための学会参加費・旅費などに使用する計画である。
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