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2023 年度 実施状況報告書

オンライン還元反応を用いた測定対象物の構造に依存しない蛍光誘導体化LC定量法

研究課題

研究課題/領域番号 21K05135
研究機関福岡大学

研究代表者

能田 均  福岡大学, 薬学部, 教授 (20164668)

研究分担者 坂口 洋平  福岡大学, 薬学部, 助教 (10712507) [辞退]
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード蛍光誘導体化 / 消光性物質 / ジスルフィド試薬 / オンライン還元検出 / 液体クロマトグラフィー
研究実績の概要

蛍光検出法は、LC分析における検出法の一つであり、LC-質量分析(MS)が主流となった現在においても、その検出感度、汎用性、安定性、費用対効果から利用することも多い。その際、測定対象の多くは蛍光性を持たないため、蛍光団を測定対象物へ化学修飾する蛍光誘導体化法が用いられる。蛍光誘導体化法を用いることで、無蛍光性の測定対象物であっても、構造中に反応活性部位があれば、蛍光検出が可能となる。そのため現在では数多くの蛍光誘導体化試薬が開発され、市販されており、広範囲の分野において、多くの物質に対して適用可能となっている。しかし、測定対象物の構造内に重原子や強力な電子求引基もしくは、別の吸光団を持つ化合物は、重原子効果または蛍光共鳴エネルギー移動などにより減光または消光する場合がある。このような場合、高感度な分析が困難であった。またこれらの官能基が存在しない場合でも、測定対象物の化学構造が蛍光強度に影響を与えるため、同じ蛍光団を誘導体化した場合でも、測定対象物によってそれぞれ異なる蛍光強度が異なる。そのため、通常のLC分析と同様に、測定対象物それぞれ個別の標準品が必要となる。
これらの問題点は、蛍光発現が種々の環境に影響されることに起因するものであり、現状の蛍光誘導体化LC分析法では解決することは難しい。今回提案する蛍光誘導体化-LC法は、ジスルフィド結合を有する蛍光誘導体化試薬を、測定対象物へ誘導体化し、LC分離後、オンライン還元反応を行うことで、検出する蛍光物質を共通の蛍光物質として蛍光検出を規格化・標準化するものである。これにより、測定対象物の構造に依存しない検出が可能となり、これまで蛍光誘導体化が適用できなかった物質(重原子または強力な電子求引基を含有する物質)への適用や、個別の標準品を必要としない直接的な定量分析が可能となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、スルフィド構造をもつ蛍光誘導体化試薬の合成、本分析システムの構築及びモデル化合物にアルキルアミンを用いた定量性の確認を行い、次の点について明らかにしている。まず、①合成、精製した蛍光誘導体化試薬は、質量分析計により予想される構造であることが確認された。また、本誘導体化試薬を用いてアルキルアミンへの誘導体化が可能であった。②アルキルアミン誘導体及び本誘導体化試薬を用いてオンライン還元条件の最適化を行い、還元反応が完全に進行し、いずれのアミンからも単一の蛍光物質が生成することを確認できた。③本システムの定量性を確認するため、安定同位体希釈-質量分析法により得られた定量値と本システムにより得られた定量値とで比較し、標準偏差内で一致することが確認された。また,④更に蛍光特性が望ましい蛍光団としてニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)をもつ蛍光誘導体化試薬を合成し、その構造確認を行った。⑤この試薬を、蛍光消光性アミノ酸であるトリプトファンをモデル化合物に用いて蛍光誘導体化及び逆相LC分離、オンライン還元-蛍光検出に基づくLCシステムの原理確認を行った。
令和5年度においては,前年度⑤にて原理確認した方法を2種アミノ酸(トリプトファン,ロイシン)に適用し,UV検出器と蛍光検出器をオンライン還元部を挟んで直列に配したLCシステムにて,トリプトファンが消光することなく蛍光検出できることを実証し,物質量に比例する蛍光検出の可能性を示した。

今後の研究の推進方策

蛍光誘導体化試薬が複雑な構成となり,合成において不純物を取り除くことが困難であり,試薬自身もクロマトグラム上で大きなピークとなる。そこで,試薬を固相化して合成時の各ステップにおける洗浄を徹底して,高純度化を図り,更には過剰の試薬をLC前に取り除き,試薬由来の妨害ピークを低減させて高感度化と適用性の拡大を検討する。

次年度使用額が生じた理由

令和5年度における研究は,前年度に合成しいた試薬を用いて,その適応研究が主なもので物品の購入が少なく,予定していたLC関連消耗品も現有品を有効活用できたため,費用を削減することができた。令和6年度については,当初予定していなかった新しい原理の固相化試薬を検討するため,その合成に関与する固相担体,試薬類の購入に充てたい。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 高選択的三次元キラルHPLCを用いるアミノ酪酸構造異性体の生体内含量解析2024

    • 著者名/発表者名
      川添奈倫, 古賀鈴依子, 石井千晴, 三田真史, 井手友美, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 三次元キラルHPLCを用いるリシンおよび代謝物のヒト血漿・尿中における含量解析2024

    • 著者名/発表者名
      松尾あかり, 古賀鈴依子, 三田真史, 井手友美, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 三次元HPLCを用いるシトルリンおよびオルニチンのキラル識別生体内含量解析2024

    • 著者名/発表者名
      守田衣織, 古賀鈴依子, 石井千晴, 三田真史, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] エキシマー蛍光誘導体化を用いた実試料中カルノシンおよびヒスチジンの高選択的二次元キラルHPLC分析2023

    • 著者名/発表者名
      新井杏奈, 古賀鈴依子, 三田真史, 井手友美, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      第30回クロマトグラフィーシンポジウム
  • [学会発表] チロシンおよびニトロチロシンを対象とする高選択的三次元キラルHPLC分析法の開発2023

    • 著者名/発表者名
      江頭美咲, 古賀鈴依子, 三田真史, 井手友美, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      第30回クロマトグラフィーシンポジウム
  • [学会発表] フルオラスキラル誘導体化LC-MS/MS法による飲料中キラルアミノ酸の分析2023

    • 著者名/発表者名
      翁 美月, 宮里ちひろ, 古賀鈴依子, 秋田健行, 浜瀬健司, 吉田秀幸, 能田 均
    • 学会等名
      第30回クロマトグラフィーシンポジウム
  • [学会発表] 永久電荷誘導体化LC-MS/MSによる長鎖脂肪酸の高感度分析(2)-魚肉試料への適用-2023

    • 著者名/発表者名
      蘇木健斗, 川末慎葉, 古賀鈴依子, 吉田秀幸, 能田 均
    • 学会等名
      第30回クロマトグラフィーシンポジウム
  • [学会発表] ジスルフィド結合を有する蛍光誘導体化試薬の開発とアミノ酸分析への適用2023

    • 著者名/発表者名
      丸岡 笑, 古賀鈴依子, 吉田秀幸, 能田 均
    • 学会等名
      第30回クロマトグラフィーシンポジウム
  • [学会発表] Enantioselective Determination of Ornithine and Lysine in Human Physiological Fluids Using a Highly Selective Two-dimensional HPLC System Based on Intramolecular Excimer-forming Fluorescence Derivatization2023

    • 著者名/発表者名
      Reiko KOGA, Masashi MITA, Tomomi IDE, Hideyuki YOSHIDA, Hitoshi NOHTA, Kenji HAMASE
    • 学会等名
      51st International Symposium on High Performance Liquid Phase Separations and Related Techniques; HPLC2023
    • 国際学会
  • [学会発表] アミノ酪酸構造異性体を対象とする三次元キラルHPLC分析法の開発とヒト尿中含量解析2023

    • 著者名/発表者名
      古賀鈴依子, 川添奈倫, 石井千晴, 三田真史, 井手友美, 吉田秀幸, 能田 均, 浜瀬健司
    • 学会等名
      第17回D-アミノ酸学会学術講演会
  • [学会発表] ポリカルボン酸分析のための永久電荷を持つ誘導体化試薬の開発2023

    • 著者名/発表者名
      川末慎葉, 古賀鈴依子, 大城直雅, 吉田秀幸, 能田 均
    • 学会等名
      第60回全国衛生化学技術協議会年会

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公開日: 2024-12-25  

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