研究課題
光触媒作用のある半導体はいくつか知られているが,その中でも最も一般に用いられているのは酸化チタンである。その理由は化学的に安定で環境・人体に対して無害であり,安価で経済的かつ太陽光で動作することなどによる。しかしながらバンドギャップが3.2 eVと大きいため感度が紫外域のみに限られてしまう。一方,可視光に感度のあるダブルペロブスカイト型光触媒は太陽光により効率的に水素を製造できるポテンシャルを秘めている。しかしながらダブルペロブスカイト型光触媒の更なる機能向上のためには原子構造と電子構造についての理解と,表面における反応機構の解明が欠かせない。そのため最終年度はダブルペロブスカイトのスラブをモデル化し,その上に水分子が在る系の超大規模第一原理計算を実施した。当初ハイブリッド汎関数による計算は収束性が悪く,なかなか計算結果を得ることができなかったが,擬ポテンシャルを工夫することで劇的に収束性を向上させることができた。計算の結果,水分子の吸着脱離の過程を有限温度でシミュレートすることができた。光触媒は光を吸収して電子とホールを生成し,それぞれ別々に表面に移動し,物理吸着した基質に作用して酸化還元反応を起こす。本研究における表面の仕事関数の計算から,ダブルペロブスカイトには二つの極性面があり,そのバンドギャップが確かに水分子の解離準位に位置し,光吸収による触媒反応に寄与することを確認できた。さらに表面欠陥のバンドギャップに及ぼす影響について定量的に見積もることができた。これらの成果を論文として発表した。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (6件)
Surfaces and Interfaces
巻: 45 ページ: 103914~103914
10.1016/j.surfin.2024.103914
International Journal of Hydrogen Energy
巻: 51 ページ: 1471~1475
10.1016/j.ijhydene.2023.11.147
Solid State Communications
巻: 373-374 ページ: 115336~115336
10.1016/j.ssc.2023.115336