研究課題/領域番号 |
21K05150
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘和 愛媛大学, 社会連携推進機構, 准教授 (10537822)
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研究分担者 |
秀野 晃大 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 講師 (30535711)
深堀 秀史 愛媛大学, 紙産業イノベーションセンター, 准教授 (70617894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リサイクル / グリーンコンポジット |
研究実績の概要 |
カーボンニュートラルな社会実現に向けた取組みの中で、石油由来資源プラスチック使用量の削減の手段の一つとして、紙に樹脂をラミネートあるいは含浸した耐水紙が注目されている。しかしながら、耐水紙はプラスチックに比べ耐久性が低いため、素材の高寿命化の観点から、リサイクル方法の確立は重要である。また、紙は、回収や再利用のシステムが確立しているが、耐水紙は、樹脂を分離する工程が必要となり、汎用の紙リサイクルに比べ、エネルギーやコスト面での負荷が大きい。そこで、今後、脱プラ/減プラ需要で拡大が予想される耐水紙にて、紙と樹脂を分離すること無く素材自体の高寿命化につながるリサイクル方法としてウッドプラスチック(WPC)への活用を検証する。 研究は大きく「①多分岐繊維:耐水紙から紙と樹脂を分離すること無く、かつ、補強効果(アンカー効果)等の機能性が高いWPC用フィラーの多分岐繊維」、「②多分岐繊維の高相容化:多分岐繊維のポテンシャルをWPC性能として最大限に発現させるため、樹脂との接着性(相容性)を高める多分岐繊維の表面処理」、「③WPCに適した耐水処理:脱プラ/減プラ用途としての性能を確保し、かつ使用後、WPCフィラーとして適した耐水紙を製造するための耐水処理」の3点を実施する。本年度は、現在流通している耐水紙の古紙を用い、多分岐繊維を作製するための粉砕条件が繊維性状に及ぼす影響を検証した。また、この多分岐繊維を用いWPC化し、コンパウンドに及ぼす影響ならびにWPCを成形し、機械的性能の評価を実施した。さらに、機械的特性評価を踏まえ、多分岐繊維と樹脂の相容性の関係性を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①多分岐繊維 流通している耐水紙古紙を予め1㎝以下に裁断し、古紙の解繊で用いられる叩解粉砕、木粉等を製造に用いられるせん断粉砕、紙等の微粉化に用いる切削粉砕の3つの粉砕手法で多分岐繊維を作製した。紙の繊維に対し分岐構造を付与するためには、含水状態で粉砕することが必要となるが、粉砕後に乾燥工程が必要となり、コストやエネルギー使用量の観点から、含水量は少ないほうが良い。本研究で用いた各種粉砕装置はスペックの関係上、粉砕できる含水量の範囲がそれぞれ異なっているが、せん断粉砕および切削粉砕にて、含水量10~20%の低含水量で分岐構造が形成した点は、意義ある成果であった。樹脂が無い古紙の場合、低含水量で粉砕すると繊維の断裂が進行するが、耐水紙は、樹脂で繊維が拘束されているため、繊維表面が優先的に解繊されたと考えられる。ただし、多分岐化は、WPCにおける補強効果発現が前提であるため、②において、WPCにてその評価を実施した。 ②多分岐繊維の高相容化 多分岐繊維でWPCを補強するためには、樹脂と多分岐繊維の接着が必要となる。本研究では、接着性を高めるに物理的と化学的双方の効果を目的としている。物理的効果は、①で実施した多分岐構造で、分岐部分のアンカー効果を期待している。化学的効果として21年度は、酸変性樹脂を用い、相容性を高める手法で検証した。WPCコンパウンドの流動性においては、粉砕手法の影響が大きく認められたが、これは、多分岐構造よりは、粒子サイズの影響によるものと推察された。補強効果に関しては、せん断粉砕による多分岐繊維が高い効果を示した。しかしながら、耐水紙に用いている樹脂が弱いため、この影響を強く受けている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関しては、当初予定通りに推進する。「①多分岐繊維」では、21年度のWPC結果を踏まえ、補強効果のある分岐形状が付与できる粉砕条件を検証するとともに、量産装置あるいは容易に量産に移行できる装置にて量産検証を実証する。さらに、後述する「③WPCに適した耐水処理」で作製した耐水紙を用い、多分岐繊維製造の条件を検証する。「②多分岐繊維の高相容化」では、耐水紙に含まれる樹脂部分をターゲットとし、紙と樹脂双方に相容できる改質を実施する。「③WPCに適した耐水処理」では、耐水紙を製造する紙産業で実現可能な手法にて、脱プラ/減プラニーズに対応できる耐水処理を確立するとともに、「①多分岐繊維」および「②多分岐繊維の高相容化」の結果より、WPC用途により適した条件に改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、実験歩留まりが向上し、想定していた材料使用量が少なくなったためである。また、繰り越し分は、次年度購入予定の材料費にて、円高、原油高等による値上がり分に補充する。
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