カーボンニュートラルな社会実現に向けた取組みの中で、石油資源由来プラスチック使用量削減の手段の一つとして、紙に樹脂をラミネートあるいは含浸した耐水紙が注目されている。しかしながら、耐水紙はプラスチックに比べ耐久性が低いため、素材の高寿命の観点から、リサイクル方法の確立は重要である。また、紙は回収や再利用のシステムが確立しているが、耐水紙は、樹脂を分離する工程が必要となり、汎用の紙リサイクルに比べ、エネルギーやコスト面での負荷が大きい。そこで、今後、脱プラ/減プラ需要で拡大が予想される耐水紙にて、紙と樹脂を分離すること無く素材自体の高寿命につながるリサイクル方法としてウッドプラスチック(WPC)への活用を検討する。 研究は大きく「①多分岐繊維:耐水紙から紙と樹脂を分離すること無く、かつ、補強効果(アンカー効果)等の機能性が高いWPC用の多分岐化繊維」、「②多分岐化繊維の高相容化:多分岐化繊維のポテンシャルをWPC性能として最大限に発現させるため、樹脂との接着性(相容性)を高める多分岐化繊維の表面処理」、「③WPCに適した耐水処理:脱プラ/減プラ用途としての性能を確保し、かつ使用後、WPCフィラーとして適した耐水紙を製造するための耐水処理」の3点を実施した。本年度は、高い耐水性とWPCフィラーとしての機能の双方を実現する耐水紙の処理方法を確立した。また、WPCに添加することで、機械的特性だけでなく、耐久特性の向上も実現した。研究全体では、低含水状態で耐水紙から樹脂分を除去すること無く多分岐繊維の製造方法を確立し、この耐水紙の樹脂分を酸変性樹脂に置換する表面処理手法を見出し、WPCフィラーとして高い機械的特性を付与することを実現した。また、前述のとおり、この手法を高い耐水性を付与した耐水紙においても実証した。
|