研究課題/領域番号 |
21K05151
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
本九町 卓 長崎大学, 工学研究科, 助教 (70404241)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリウレタン / ケミカルリサイクル / 廃棄高分子 |
研究実績の概要 |
持続可能な社会構築を目指しての取り組みは、環境問題への意識の高まりからリサイクルへの関心が高まっている。特にプラスチックを対象とする問題は、原料においては化石資源の枯渇、製品については環境ホルモンや劣化に対する耐久性の向上、そして廃棄される際には、高い耐久性が故の環境への長期の負荷ならびに最近では、マイクロプラスチックに代表されるような以前ではそれほど大きく取り正されなかった問題が発生している。このような中で、化石資源の枯渇や環境負荷を解決するために大きく貢献すると考えられるケミカルリサイクル技術の確立がある。しかしながら、高い耐久性を持ち、様々な環境にさらされたことで多くの混合物となった廃棄プラスチックを分解しうる技術開発は大きく遅れていると言わざるを得ない。今後、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーといわれるように石油を素としないエネルギー開発がさらに進めば、原油価格の高騰によるプラスチック製品もそれに伴い価格が上昇することは想像に難くない。 炭酸を発生させるための水と二酸化炭素は、環境負荷の低い物質である。これらが反応して生成する炭酸水もまた広く一般に飲料水として広まっている。炭酸は、これまでに用いられた高分子のケミカルリサイクルに用いられる一般的な薬品とは異なり、環境負荷がほぼ無いといってよい。一般的に弱酸として認識されているが、特定の条件を設けることで塩酸や硫酸で行っている酸性条件下での反応を誘起しうることを見出した。さらに炭酸は、常圧とするだけで媒体である水が中性となる。すなわちこれまでの酸触媒と異なり、中和の操作が不要であるばかりか、当然のことながら中和塩が発生しえない。このようなこれまでの酸触媒では実現しえない系において、高分子を副反応を伴うことなく加水分解することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度はコロナ禍のため大学の入構が規制されたものの、2020年度ほどの強い規制は成されなかったことが幸いし、ある程度の研究活動が可能であった。試料の調整等は待ち時間がある程度見込まれたことから、コロナ渦であってもそれほど大きな影響もなく想定していたとおり順調に進んだ。試料調整が影響しなかったことにより、その後の炭酸水を用いた加水分解反応における種々の条件設定ならびに速度論的解釈はスムーズであった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果から、ポリオールの化学構造が本炭酸水での加水分解へ及ぼす影響は主に親水性(疎水性)に依存することが見いだされた。さらに、まだ結論には至っていないものの架橋構造が強く加水分解挙動へ及ぼす影響が見いだされつつある。このことは研究を開始する時点では想定していなかった興味深い挙動である。そこで、一次構造のみならず、架橋構造の導入(ここでは、化学的架橋にとどまらず物理的架橋(水素結合や相分離など)も考慮している)は、低分子ならびにオリゴマーにおける加水分解とは全く異なる挙動を示すことが考えられる。そこで、まずは同一原料からなる化学架橋密度の異なるポリウレタンを調製する。これにより系統的な化学架橋構造の影響を明らかとする。この際に、ウレタン構造を架橋点に有する架橋高分子とウレタン構造を架橋店以外に持つ高分子を別途合成する。これにより、炭酸による加水分解においての架橋密度の影響のみならず、架橋構造の違いによる影響を評価する。これにより高分子の分子運動性との相関を評価しうると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦ならびにウクライナ情勢等を受けて発注装置の納品が遅れているため次年度持ち越しとなった。 次年度使用額は、えられた分解生成物の分子量測定を行うために高速液体クロマトグラムシステムに使用する予定である。
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