研究課題/領域番号 |
21K05157
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
柴田 雅史 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (00513657)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォトクロミック色素 / 3-デオキシアントシアニジン / タカキビ / 光着消色 / 植物色素 |
研究実績の概要 |
アントシアニン系植物色素である3-デオキシアントシアニジン(3-DA)を用いて、食品や肌への直接使用も可能な、安全性の高い植物色素由来のフォトクロミック粉体(光照射に関連して赤色着色と消色を繰り返す顔料)を得るための研究をおこなっている。食用穀物であるソルガムなどに含まれる3-DAは、天然色素の中では特異的にフォトクロミック性を有しているが、現状では溶液状態での利用に留まる。本研究では、3-DAをタカキビ種子の殻より分離抽出し、これを多孔質粉体の細孔内に適切に導入・固定化することで、産業上有益なドライ条件でも使用できる、植物色素由来のフォトクロミック粉体(複合体)を得ることを目指している。研究のポイントは 1)多孔質粉体として最適なものを選定する。2)色素が細孔内で溶媒中と同様に運動性が高く、異性化をしやすい環境となる条件にするための、有機溶剤を選定する。3)粉体の細孔内に、適切量の色素と有機溶剤を共存させる。ということにある。 昨年度までは、球状含水シリカ粉体にタカキビから抽出した色素溶液を吸収させた複合体を題材に、フォトクロミック性能向上と実用化に向けての課題解決に取り組んだ。具体的には、溶液蒸発、吸湿、pH変化、金属イオンの混入と、そのフォトクロミック性能への影響ならびに問題が起きる濃度や程度の範囲を明らかにした。その結果、複合体を高湿度に保管した際の吸湿が最も大きな問題であり、保存条件によっては細孔内から色素溶液が溢れ出てしまった。そこでこの解決策を検討したが、多孔質体の変更や複合体の表面処理や封孔をおこなっても解決に至らなかった。 今年度は当初の予定を変更して、多孔質体と色素溶液(ポリオール)との複合化ではなく、ポリオールをゲル化することによる固形化を検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に、複合体を高湿度条件に置くと、色素のポリオール溶液および多孔質粉体が吸湿をしていくことで、細孔内から色素溶液が溢れ出てしまうという新たな課題が発覚し、その解決策は見当たらなかった。そのため当初の予定を変更し、色素溶液(ポリオール)をゲル化剤により固形化する手法へと変更した。 現段階では、ゲル化剤としてカンテンを使用することでポリオールの固形化が可能であり、またポリオールに色素を溶解させれば、フォトクロミック性を示すゲルが得られることまでは確認された。ただし、フォトクロミック効果を最大とする組成条件や保存安定性に関する課題については未だ明らかになっていない。
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今後の研究の推進方策 |
現段階ではカンテンをゲル化剤とすることでポリオールの固形化が可能であり。また、ポリオールに色素を溶解させれば、フォトクロミック性を示すゲルが得られることまでは確認された。 今後の予定としては、カンテン以外の適したゲル化剤の有無、現在ポリオールとして使用しているジプロピレングリコール(多孔質粉体を用いた系でフォトクロミック性能はもっとも良好であった。)はゲル系でも最適か。用いる弱酸性条件の最適値の再確認をおこなう。 その上で、多孔質粉体を用いた系で実用化にむけての課題であった、溶液蒸発、吸湿、pH変化、金属イオンの混入などが、ゲルの系では問題にならないかの確認へと進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者が2023年9月から12月の間、断続的に病気療養のための休暇をとったこと、ならびに研究方針を多孔質粉体を活用するものからゲル化剤を活用するものへと変更をおこなったため、研究の遂行計画に変更が生じたため。 次年度は、未完である色素ゲルの最適化をおこなうため、カンテン、ポリオール、pH調製剤などの原料の購入ならびにガラス容器の購入に使用する計画である。
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