研究課題/領域番号 |
21K05161
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
舘 秀樹 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (60359429)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 光重合 / 光分解 / 易解体 / 複数回利用 |
研究実績の概要 |
本研究では、架橋と分解反応を組み合わせ、接着と解体が複数回可能な新しい架橋構造を有する易解体性接着剤の創製を目的とする。これまでに、光分解性架橋剤、アクリルモノマー光開始剤を含むフォーミュレーションに連続的に光照射を行うことで、連続的に光重合と光分解が進行することがわかっている。 多官能ポリオールおよび多官能イソシアネートなどの反応性添加剤を加えたフォーミュレーションを作成し、再接着および再架橋可能な系の構築を行った。多官能イソシアネートや多官能ポリオールなどを加えた際に、光分解性架橋剤の光分解を阻害する可能性があり、共存下での光分解特性の評価を実施した。その結果、光源と吸収がかぶらない添加剤を選定することで、光分解性架橋剤の光分解が進行し、光分解反応が阻害されないことがわかった。多官能イソシアネートと多官能ポリオールを添加した系が後加熱により分解後再架橋可能であることを確認したが、ばらつきが大きいこと、添加剤が多いと再架橋が進みやすいが、その場合は再架橋後に再分解する系の構築が難しいことから、フォーミュレーションを再検討および再構成を実施中である。 また、本科研費の成果を一部含む発表に対して、第71回ネットワークポリマー講演討論会にて、主催する合成樹脂工業協会から学術奨励賞の受賞を受けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究申請書に基づき、以下の1および2の2点について研究を進めた。また、1と2を組み合わせることで3の易解体性接着剤の創製に着手した。卓上精密万能試験機の導入が今年度となったため、作成した接着剤の測定や解析に一部遅れが生じている。 1.架橋と分解が可能な分解性架橋剤の開発:光分解性架橋剤を合成し、光重合および光分解性の評価を行った。また、イソシアネートやポリオールなどの再架橋性を有する添加剤を加えた際の光分解性架橋剤の光分解性評価を実施した。 2.架橋反応性モノマーと分解反応性モノマーのブレンドによる再接着および再解体可能な接着剤の開発:多官能ポリオールおよび多官能イソシアネートを加えたフォーミュレーションを作成し再接着および再架橋可能な系の構築を行った。多官能イソシアネートと多官能ポリオールを添加した系が後加熱により分解後再架橋可能であることを確認したが、ばらつきが大きいこと、添加剤が多いと再架橋が進みやすいが、その場合は再架橋後に再分解する系の構築が難しいことから、フォーミュレーションを再検討および再構成を実施中である。 3.複数回の接着と解体が可能な易解体性接着剤の創製
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、引き続き架橋と分解が可能な分解性架橋剤の開発と最適化を進めるとともに、架橋および分解過程のモニタリングを詳細に行う。1および2を組み合わせることで複数回の接着と解体できる易解体性接着剤を創製する。架橋や分解などに係る反応性の最適化、解体性評価、接着特性および耐熱性の相関関係について詳細に検討し、保存安定性、粘着特性、耐熱性および機械的強度等の評価結果と照合して、接着剤の改良(合成、評価)を繰り返し、複数回利用できる易解体性接着剤の最適化を行う。イソシアネートとポリオールを添加した系が後加熱により分解後再架橋可能であることを確認したが、ばらつきが大きいため再架橋後の再分解の系の構築が難しい。再現性が悪いためフォーミュレーションを再検討および再構成を検討する。また、遅れが生じている卓上精密万能試験機を用いた、測定や解析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度に導入を予定していた卓上強度試験機を今年度に導入した。コロナ禍下における半導体部品の値上がりによって価格改定が行われたため、前年度の予定額よりも大幅に超過した。そのため、予定していた購入物品や出張が変更となり、予定額との差額が生じた。
|